メルケル体制の終焉 Part 6

26.06.2018

Photo: Reuter

 

 EU首脳会議(28~29日)を前に、メルケル独首相の呼びかけで、24日に移民問題に関する欧州連合緊急会議が行われた。メルケル政権の連立パートナーであるキリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー内相と移民・難民保護政策を巡る対立でメルケル政権安定が揺らいでいる。

 

 ゼーホーファー内相から移民問題の解決策を打ち出すよう最終警告を受け、メルケル首相はEU加盟国すべての合意を取り付ける移民・難民対応策を模索する狙いで緊急会議を行った。今回の緊急会議に参加したのはEU加盟国28カ国のうち16カ国。EUの移民受け入れの公平な分担政策に反対してきたポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、スロバキアのヴィシェグラード4カ国(V4)は参加を拒否した。

 

 EUの移民・難民問題の中心となっているのが、移民・難民を受け入れる責任はどこにあるか、最も影響を受けているイタリアやギリシャに対して、どのような対応をするべきかである。

 

イタリアが求めるEU移民・難民政策の見直し

 イタリアはEU加盟国のなかで、EU移民政策に最も厳しい見直しを求めている。コンテ首相は、EUの難民申請ルールである「ダブリン規則」の廃止と新しい仕組みへの転換を要求。その背景には、難民希望者が最初に到着した国に保護申請の処理を義務付け、申請せずに別の国に移動しても最初の到着国に戻されるダブリン規制によって、過度な負担がギリシャやイタリアに集中してきた。

 

 国連難民高等弁務事務所(UNHCR)によると、2015年にトルコ経由で地中海を渡って欧州入りした101.5万人以上の難民は主にギリシャ、イタリアに到着した。2015年をピークに難民の数は減少したとはいえ、2018年6月までに、すでに4万人(イタリア16,000人、ギリシャ12,000人、スペイン12,000人)の難民が欧州入りして、年内には8万人以上が欧州に流入すると予測されている。

 

 イタリアの新政権が発足して以来、難民の受け入れを拒否する強硬姿勢を見せている。10日には、アフリカなどからの629人の難民を乗せたフランスNGOの船、23日には234人、24日には239人の難民を乗せたドイツNGO船が難民申請施設のあるイタリアの港での入港を拒否された。

 

食い違う主張で深まる溝

 下のグラフで明らかなように2015年をピークとして欧州へ渡る難民と移住希望者の総数は激減しているが、上陸を受け入れる国は限られているため、イタリアの混乱は続いている。イタリアはダブリン規則を破棄し、イタリアの港に入港しても、イタリアではなく、難民申請を難民希望国で行なわれる仕組みの導入を求めている。この案は、ドイツCSUのゼーホーファー内相が求めている、ドイツ入国を拒否し、イタリアやギリシャなど最初に難民保護申請を行った国に強制送還する主張とは、相容れないものである。