超臨界CO2タービンでクリーンな火力発電

13.04.2016

 

Photo: nextbigfuture

 

福島第一の事故により人々は原子炉の安全性に懐疑的になりギャラップ世論調査では原子力肯定派の米国民は過半数を割り込んだ。原爆投下の是非を問う意識調査で投下に肯定的な意見が半数を割り込んだのと同じである。一方で米国のエネルギー消費は増え続けており、EVの増大で大幅な電力需要の増大も予想される。

 

米国はシェールオイルの増産で天然ガス価格が下がり続け、火力発電の経済性が高まった。そのため遅々として進まない原子炉の更新を尻目に、天然ガスを燃料とするクリーンな火力発電への期待が高まりつつある。天然ガス火力発電のキーテクノロジーはガスタービンである。GEの技術者が開発した新設計のCO2を用いる新型タービンはコンパクトながら10,000戸の家庭に電力を供給できる。燃焼ガスの代わりに超臨界CO2(注1)で駆動するタービンはクリーンで効率の良さが特徴である。

 

(注1CO2を高圧、高温(最大700C)で超臨界状態としてタービンを回した後は温度が下がるので、再び高圧をかけ温度を上げて超臨界状態として循環させる

 

タービンは同じ出力を持つ蒸気タービンの1/10と小型で始動・停止が容易なため頻繁にオン・オフできる電源として活用できる。またエネルギー変換効率が50%と蒸気タービン(40%)より高い。圧縮が容易で熱伝導率が高い超臨界状態のCO2を用いることが高効率をもたらしている。GE社の試作機は33MWの発電能力がある。

 

余剰電力で作った溶融塩に蓄熱させておき、需要に応じてタービン発電機を動かせば蓄電機能が実現出来るが、CO2タービンは数分で始動ができる。CO2タービンはバッテリーよりすぐた蓄電能力が期待できる。GE社はCO2タービンはバッテリーより効率の良い蓄電・発電能力を持ち、送電網に組み込まれることで再生可能エネルギーの不安定性を解消することができるとしている。

 

なお東芝は2016年に米国テキサス州で世界初の超臨界CO2タービンで25MWの実証試験を開始する。最終的には300MWクラスの商業発電プラントを計画している。標準的な原子炉の約1/3の出力でも夜間電力需要を補う補助発電として再生可能エネルギーの弱点である時間変動を解決できれば、脱原発の動きも活発化する。