完成に近づく世界最大のロケットキャリアー

22.06.2016

Image: Space.com

 

現在進行中の宇宙ビジネスには以下のような多くの企業がある。スペースX社のイーロン・マスクに代表されるように、IT企業で集めた資金力にものを言わせた起業とも取れるケースが多い。国家主導の宇宙開発の採算性が悪いためプロジェクトの多くが民間主導に切り替わりつつある。


・スペースX
・ロッキードマーテイン
・ボーイング社宇宙部門
・アルマジロエアロスペース 
・ビゲローエアロスペース 
・ブルーオリジン 
・オービタル・サイエンシズ・コーポレーション(現在はオービタル ATK) 
・スペースアドベンチャー 
・シェラネバダ・コーポレーション

・ヴァルカン・エアロスペース  

 

これらの企業の目指すものはそれぞれ異なるが、共通するのは「ロケット打ち上げコストの削減」である。ヴァルカン・エアロスペース社はカリフォルニア州モハーベ砂漠にある工場でロケット運搬のための世界最大のジェット機を製作中である。

 

 

ヴァルカン・エアロスペース社が目指すストラト・ローンチ計画では、打ち上げロケットの再利用ではなく、ロケットを高空まで運んで切り離して点火することによって、ロケットエンジンを小型にして燃費も稼ごうというものである。これまでも巡行ミサイルなど小型ロケットをB52などの大型機に吊り下げて高空に運び、水平に発射することは珍しくなかったが、この計画で狙うのは衛星を地球を周回する軌道に乗せるための大型ロケットを吊り下げて運ぶための巨大なジェット機である。

 

ヴァージン・ギャラクテイクの観光宇宙船を地上から100kmの宇宙空間に運ぶのにホワイトナイト2と呼ばれる双胴型の運搬専用機が用いられるのと似ているが大きさが異なる。ストラト・ローンチは主翼が117mでジャンボ機より長い。機体重量は544トンと、これもまた世界最大となる。

 

 

 

Source: airpigs

 

ストラト・ローンチ計画は2011年に発足した。資金面をマイクロソフト共同創業者であるポールアレンが支援し、豊富な資金で若いエンジニアをモハーベ砂漠の拠点に集め、IT企業のような自由な環境で開発を進めて来た。これまでにヴァージン・ギャラクテイクのホワイトナイツ1とスペースシップ1の組み合わせに次いで、ホワイトナイツ2とスペースシップ2での飛行に成功し2013年4月にはロケットを使って高度17kmに達した。

 

ストラト・ローンチはホワイトナイツのスケールアップ版と考えれば、主翼の長さが41mの双胴型航空機を約3倍に拡張したと言える。ストラト・ローンチのエンジンにはジャンボジェット(B-747)のエンジンを片側に3基づつ計6基を使用する。

 

ストラト・ローンチで打ち上げられるロケットはスペースX社のファルコン9同等のものである。ファルコン9は再利用のために余分の燃料を積載するがストラト・ローンチで高空から発射出来れば、燃料は少なくてすみ経済性が増大する。当初はパートナーとして運搬されるロケットを担当するために、プロジェクトに参加していたスペースX社は方向性が異なるために2012年に離脱した。

 

 

そこでストラト・ローンチはオービタルATKやエアロジェッット・ロケットダインと共同でロケットエンジンを開発しようとしたが完成には至っていない。ストラト・ローンチ製作は進み機体の76%が完成し、年内には試験飛行、2020年のロケット打ち上げサービス開始となっているが、打ち上げロケットに関する不透明性が続いている。打ち上げるロケットを確定するにはパートナー企業が不可欠だがそれが決まらないまま機体だけが先行して開発されている。