Photo: Greener mobiles
再生可能エネルギーを使ってオフグリッド化する動きは家庭にとどまらず巨大な公共施設や工場に広がりを見せている。風力とソーラーパワーを組み合わせて電力を自前で供給することは、環境保護に寄与しエネルギーコストを削減できることのほかに、電力送電網へのテロ攻撃による全停電に備えることが狙いである。
テスラ社がネバダ州に建設中のバッテリーギガファクトリーでは風力とソーラーパネル発電を組み合わせて完全に電力を自給できる。ギガファクトリーは現在はパナソニックが供給しているEV用バッテリーを年間50万台分生産する能力がある。ネバダ州の広大な環境は発電に有利で工場の屋根をソーラーパネルとし(下の写真)、工場周辺に風力発電設備を建設する。
Source: TESLA Motors
2015年8月にインドのコーチン国際空港が太陽発電で空港電力の完全なオフグリッド化を果たした。全部で46,000枚のソーラーパネルの発電量(12MW/日)は空港全体の電力消費をまかない、2040年までに300,000トンのCO2排出量削減となる。コーチン国際空港は特殊な空港ではない。1999年から稼働しているインドで三番目に大きい国際空港である。2013年度の旅客数は375万人であった。
これから先進国は老朽化する原発の廃炉に対処しつつ原子力を別エネルギー源で置き換えざるを得ない。特に米国にあるおよそ100基の原発の半数が40年を経過しているが新規建設が進まない。ドイツは福島第一の事故で脱原子力に舵を切ったが、その他の先進国は廃炉を待つという「消極的」脱原発政策をとるが、いずれは10数年で廃炉を迎えるため積極的な再生可能エネルギーへの転換政策がなければ、電力不足と電力料金の値上げ(注1)に悩むことが目に見えている。
(注1)再生可能エネルギーへ転換すれば、初期投資の補助金と電力買い上げ保証制度で電力料金に反映される。また日本のように原油・天然ガスを輸入に頼り火力発電に切り替えると燃料費コストで貿易赤字となる。一方、核燃料廃棄物の処理と廃炉費用で例え原子力を止めても継続して費用が発生し、これも電力料金に上乗せされるので、何れにしても電力料金の上昇が避けられない。
国家の政策で再生可能エネルギーに転換することには限界があるので、工場や空港、駅、オフイスビルなどが独立に発電して、オフグリッド化することが現実的である。スマートシテイやスマートグリッドでエネルギー消費の最適配分を行うことに加えて、住宅、工場、公共施設がおフグリッド化するのが現実的である。テスラ社のギガファクトリーやインドのコーチン国際空港はそうした方向性を先取りしている。
Source: Solar Thermal Federalation of India
インド北西部はソーラー発電の他に太陽熱の積極的な利用も理想的な日照条件で同様な地域は中東とアフリカ中央部も含まれる。こうした地域では原子炉を建設するよりはるかに低コストでオフグリッド化が可能になる。