世界中最大のバッテリー工場テスラ・ギガファクトリ

09.04.2016

Image: Tesla Motors 

 

テスラ社のEV(モデル3)が2日で受注28万台を突破し、予約金が75億ドル(日本円で約9000億円)に達したという。もちろん現在のシリコンバレーにあるトヨタ・フォードから買い取ったテスラ社工場の生産では追いつかない。生産台数を簡単に増大できるのだろうかという疑問を持つ人が多いのだが、実は大量生産できるのがEVの特徴だ。

 

EV車の構造はHVP`HVも含めて従来の車と大きく異なるのは、ラジエーター、吸気システム、燃料タンクと燃料噴射制御系、エンジン、トランスミッション、ドライブシャフト、エキゾーストなど複雑な構成部品がない。ホイールをモーターで駆動し回転を電気的に制御するだけなので、基本的にはモーター、デイファレンシャル、バッテリー、制御回路があればあとはボデイーとなる。

 

このボデイーに秘密がある。自動車のパネルにアルミ化が取り入れられているが、鋼板に比べて軽いが強度が低い(特に曲げ、引っ張り)アルミ合金の使用はまだ一部であった。世界で初めてオールアルミボデイを採用したのはホンダのスポーツカーNSXであった。そのオールアルミボデイに限りなく近い98%のアルミボデイを持つのがテスラ社のEVである。

 

結果的にはバッテリー重量のためそれでもモデルSの総重量は2.1トンだが、エネルギー効率が90%という効率の良さと圧倒的な航続距離と運動性能で、モデルSは人気車種となった。価格が高いにもかかわらず販売台数は2015年第一四半期で1万台以上に上り米国のEV販売のトップにのし上がった。モデル3は航続距離と引き換えに価格を抑えた廉価版EVだがテスラ社EVの基本的なt頃は犠牲にしていない。まるで「ミニ四駆」のような軽快な運動性能とEV車をアピールするグリルレスのフロントで人気を呼び、予約が2日で28万台となった。

 

そのテスラ社がネバダ州にパナソニックと合弁で建設中の巨大なバッテリー工場がテスラ・ギガファクトリーである。リチウムイオンバッテリーはテスラ社に限らずEVの航続距離と使いやすさを決める要素技術だが、テスラ社のEVは小型のバッテリーを車種によって異なる3,00個から7,000個を円筒状のモジュールに集めて積載する。他のEVのようにバッテリー空間にまとめるのでなく、車体の下部に広がる平板構造のバッテリーユニットは、重心を下げるのに一役買っており低い重心は高い運動性能になくてはならないものである。

 

ギガファクトリーは風力発電と屋上を埋め尽くす太陽電池パネルを組み合わせた再生可能エネルギーのみで電力を供給する独立型の向上となる。工場の生産応力は年間で500,000台のバッテリーということなので、28万台のバックオーダーは1年で解消できることになる。テスラ社自身もモデル3の売れ行きは予想外としているが、バッテリー工場の規模を50万台にした賭けは成功したと言える。

 

テスラ・ギガファクトリーの生産能力は2013年の世界中のリチウムイオンバッテリー工場の総和より大きいという。自社EVにバッテリーを供給する以外に他メーカーにも供給することを考えている。ギガファクトリーは2014年に建設が開始され2017年に生産開始が予定されている。ギガファクトリーの意味は生産量が電力換算で35GWhとなることに由縁する。

 

 

ギガファクトリーはパナソニックの技術が採用されるがどこにもパナソニックという名前はない。ギガファクトリーの住所はネヴァダ州スパークス、”Electric Avenue”だそうだ。もともとモーターを含めて下請けを使わず組み立て工場で部品を生産する率が高いテスラ社にとって唯一の購入部品であったバッテリーが自社生産できれば、原価が下がりアイフォーン並みの利益率が確保できるかもしれない。アイフォーン、スターバックス、テスラ社という高い利益率には理由がある、ということのようだ。