英国移民総数を巡る情報公開請求の背景

12.03.2016

Photo: The Telegraph

 

フランスのカレーから英国に渡るため難民が押しかけ混乱している。ドイツの難民の騒動が報道されることが多いが、英国行きを希望する難民は多い。これまで英国政府が秘密にして来たEUから英国に渡った移民総数が判明した。統計が本当なら欧州と英国の争議に発展するかもしれない。予想より130万人多い移民が英国に住んでいることがわかったからである。

 

623日に迫った欧州との国境を強化するべきかどうか、すなわち英国がEUにとどまるかどうかについての決断に影響を与える可能性があるため、この情報を開示するよう訴えた国民の請求は3カ月間無視されている。

 

 

 

 問題となっているのは統計局発表の201010月から英国のEU移民の総数904,000人に対して、政府は移民に発行した国民保険の番号数が220万人分としており、130万人のギャップがあることで、統計局も統計が整合しないことを認めている。政府は税金の対象で給付金の交付を受ける移民数を公表するべきだとの専門家が多い。

 

 国税庁と税関は情報隠しが疑われているが議会質問でも公表を避けている。例えば2015年の移民数が257,000人であるのに対して国民保険は630,000発行されている。移民はシリア難民とは限らず55,000人とされるルーマニア及びブルガリアからの移民が209,000人に上ることになる。

 

 

矛盾する政府統計

 公表されてきた移民数が倍近いものであったなら、国民の雇用や住宅に深刻な問題が生じ、国民の誤解を招き欧州脱離の投票にも影響が出るとみられている。情報開示の請求は201511月に政府の財政アドバイザJonathan Portes氏によって出されていたが、キャメロン政権に不利な情報として12月に情報開示を拒否した。

 

 統計局の統計は1年以上英国に滞在する移民であり、国民保険は短期滞在者も含まれるという説明では済まされない問題だが、政府は担当官庁の確認に時間を要するためとして情報開示を拒否している。この問題がきっかけになり移民問題を英国民が恐れる事態を避ける為だとしたら、議論をしない問答無用の態度の方が危険だ。

 

 

 欧州から移民が英国を目指す理由

 なぜ移民たちが英国を目指すのかははっきりしている。移民に寛容な英国政府ももちろん魅力だ。背景にあるのは英国の堅調な景気である。英国中央銀行によれば英国の景気は内需指導で年率+3%台の成長が1年続いている。

 

キャメロン政権はEUから英国への移民に対して最低4年間の英国定住と社会保険料納付を義務化を要求しているが、給与があれば移民たちにもそれが可能になる。しかしこの要求が受け入れられればEU残留、受け入れられなければ英国のEU離脱も視野に入る。今や移民政策がEUの求心力に影響を与えるまで深刻となっ他ということである。