破綻プロセスが始まったドイツ銀行

29.07.2016

Photo: The Spectator

 

 ドイツ銀行の第2四半期の純利益、経常収益は大幅に減少した。ドイツ銀行が抱えている1年内に満期日を迎えるデリバティブ商品が満期を迎えているなか、今後英国のEU離脱、BREXIT関連のデリバティブによる損失が拡大すると思われる。格付け会社S&P6月に、ドイツ銀行の格づけをBBB+に下げたが、ネガティブ方向に見直しを始めた。

 

 

ECB銀行ストレス・テスト

 欧州銀行監督局(EBA)によるEU加盟国の大手51の銀行を対象にしたストレス・テスト(健全性審査)の結果が29日公表される前に、ドイツ銀行の2四半期決算が発表された。純利益、経常収益は大幅に減少して破綻危機が始まっている。これから先、ドイツ銀行が抱えているデリバティブ商品の一部が満期を迎えていることで、破綻が加速する可能性が高い。

 

 6月に米FRBが発表した、大手33行の銀行ストレス・テスト結果では、ドイツ銀行とサンタンデール銀行が不合格となった。今回のEBAストレス・テストでも次に起きる金融危機に対応できない(不合格)と判断されるとみられる。そのインパクトを最小限にするために、先に決算発表を行ったと思われる。

 

 

第2四半期決算結果

 連結ベースでは、純利益は2,000万ユーロとなり、前年同期の81800万ユーロから98%の大幅減少となった。経常収益は前年同期の917700万ユーロから738600万ユーロと20%減少した。全ての事業部門で収益が下がり、最も減少を見せた、債券、株式、デリバティブ、外国為替を扱うグローバル・マーケット部門は前年同期で28%も下げている。

 

 マイナス金利、不透明な経済状況、欧州銀行の不良債権問題、デリバティブ取引による損失の拡大なので収益性の向上の見込みはない。コスト削減も進めているが、経常利益に対する費用の比率をみると、第1四半期の91%から変化はなく、未だに高い水準である。

 

 事業縮小計画として、2020年までに35000人の人員削減やドイツ国内で25%に相当する188店舗の閉鎖と3000人の削減が予定されており、収益性の改善を目指すが、結果はただちに決算に反映されるものではない。事業再編の効果は時間がかかるだけでなく、事業損失の拡大が大きいため収益性の改善は見込めない。さらに、ドイツ銀行は多数の不正操作に関する訴訟を抱えており、その罰金や和解金が収益性を圧迫するのは避けられない状況にある。

 

 

イタリアの銀行破綻が引き金

 しかし、ドイツ銀行にとって最大の問題は、イタリアの銀行が抱える不良債権問題の悪化、その具体的な対応策がなくイタリアの銀行が破綻することである。イタリアのエクスポージャーが大きいこと、世界最大のデリバティブ・ポジションをもつドイツ銀行にとって、イタリアの銀行破綻危機は同社の破綻プロセスを加速することになる。