欧州連続テロ事件の深層~ニースとミュンヘン

25.07.2016

Photo: http://usa.s5.webdigital.hu/

 

テロ事件の目撃者に奇妙な偶然 

 暴走トラックが革命記念日の花火の見物客の人混みに突っ込み、少なくとも84名が死亡したフランス南部のニーステロ事件(714日)。ニース海岸沿いの散歩道に面しているウェストミンスター・ホテルの現場がよく見えるバルコニーから、群衆にトラックが突っ込む瞬間を目撃して、スマートフォンで事件の動画を撮影したのは、ARDドイツテレビ局に所属するジャーナリストのリヒャルト・ゲッヒャー氏。同氏は英BBCのインタビューで、トラック突入の瞬間を「偶然に目撃」したと語っている。事件の場所と時刻を知らされていたかのようなゲッヒャー氏の行動は極めて不自然なのである。

 

 

 ミュンヘンに帰国した際に、偶然にショッピングモールでの銃乱射テロ事件(722日)現場に居合わせたゲッヒャー氏が、またもテロ事件の目撃者となる。スマートフォンで写真を撮り、現場の状況をツイッターに投稿、ドイツのテレビ局でインタビューを受けている。その後、なぜかツイッターからその時の写真とコメントが削除されている。

 

 

 ゲッヒャー氏の妻であるエイナット・ウィルフ氏は、イスラエルの政治家で、元イスラエルの国会議員である。かつてイスラエルの情報機関8200部隊に所属、モサドの諜報員であった。ウィルフ氏のWikipediaページの経歴から、ミューヘン乱射テロ事件前にあった、情報機関8200部隊に所属していたことが、テロ事件後には削除されている。

 

 偶然とはいえ、両テロ事件の現場に居合わせ、事件の有力目撃者となるのは、考えにくい。レーガン大統領の元財務長官補佐で元ウォール・ストリート・ジャーナル編集長のポール・クレイグ・ロバーツが指摘するように、ニーステロ事件は偽旗作戦(フォールス・フラッグ)ではないかと疑われてもおかしくない。

 

 

ニーステロ事件で恒久的戒厳令

 フランスでは、39日から始まった労働法改正法案に反対する市民運動は、労働問題にとどまらず、格差の拡大、政治の腐敗、銀行や富裕階層の暴利行為に反対する抗議運動に発展している。市民の声が政治に反映していない現状への不満、民主主義の根幹に関わる多くの問題を提起する運動に発展し、フランス中での広がりは止まらない。パリ近辺では警察隊が対処できないほどデモ隊の規模は拡大、暴動化して、事態は事実上の「内戦状態」とも言われている。

 

 フランス政府は十分なテロ対策で市民の安全性を訴え、非常事態宣言の期限を迎えることになっていた。しかし期限直前に、突然ニーステロ事件が起き、恒久的戒厳令がひかれた。デモを規制できない状態にあったオランド政権は、恒久的戒厳令で抗議活動を禁じ、警察権の強化を実施することができるようになった。市民の暴徒化を封じ込めたいオランド政権にとっては願ったりの結果となった。

 

 

ミュンヘン乱射テロ事件で銃規制の強化

  ドイツは世界でも最も銃規制が厳しい国であるにも関わらず、銃保有者数は世界4位である。拳銃所有許可証の取得には厳しい条件が課せられる。人格と精神鑑定の厳しい基準を合格しなければならない。

 

 今回のミュンヘン乱射テロ事件の容疑者のように、18歳でうつ病に悩み、精神科医による治療を受けていた人物が拳銃所有許可証を取得することは不可能なはずである。拳銃が違法な手段で入手したことになるが、正確な入手方法は不明である。EUのシェンゲン協定で国境を越えて人と物の移動が容易になった。東ヨーロッパや他の国から運び込まれた銃器が闇市場で売買されているので、裏市場で銃器が容易に入手ができる。

 

 

 ミュンヘン乱射テロ事件でドイツは銃規制の強化に動き出したが、国境が薄れた現在、ドイツ一国の問題ではなく、EU全体の問題としての対応が必要である。その点を問題視しないとなれば、銃規制の強化に別の目的があると考えられなくもない。個人が銃器を所持できなくすれば反政府勢力が市民を巻き込んで暴徒化しても治安部隊が鎮圧しやすい。

 

 

 ドイツでも、反移民、反政権の市民運動が拡大しており、移民による犯罪増加で治安が悪化、ドイツ人による自己防衛のための拳銃所有者が増加している。犯罪やテロから国民を守りきれない政府に不安と不満を持つ人たちが増えている。多くの国民が武装することは政府の武力介入の抑止力となり、ドイツ政府の脅威となるだろう。