変革が求められる「大きすぎて起訴できない」銀行

14.03.2016

Photo: occupy.com

 

 リーマン・ショックから7年半、公的資金を投入して破綻危機から救済した「大きすぎて潰せない」銀行はその後、巨大化していった。今では、「大きすぎて起訴できない」銀行と呼ばれ、脱税、マネーロンリング、株価、金利や為替の不正操作など数多くの刑事犯罪に対して起訴できない状況にある。このことは、金融システムと法制度の面で大きな問題に発展している。

 

 米国では、6大銀行(JPモルガン・チェイス、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルス・ファーゴ、ゴールマン・サックス、モルガン・スタンレー)の資産はリーマン・ショック後37%増加、金融機関の総資産の67%を占めている。その他にも、貸付や預金残高、従業員数など全ての面で規模は拡大している。その反対に、州や地域の経済に重要な役割を果たしてきた中小規模の銀行は、リーマン・ショック後20%以上は破綻又は大手に吸収合併され、その数と影響力は年々減少している。

 

 

「大きすぎて起訴できない」

 2013年の上院司法委員会でエリック・ホルダー司法長官は、金融機関は巨大化し、起訴を検討した場合、アメリカ経済だけでなく、世界経済に与えるマイナスの影響は大きすぎるため、起訴を断念するしかないと述べた。刑事起訴を見送る代わりに、巨額の罰金が科せられるようになったが、犯罪は一向に減らないのが現状である。

 

 

 2015年には、シティグループ、JPモルガン・チェイス、バークレイズ、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、UBSの6つの銀行が2007~2013年の間、外国為替の不正操作で総額57億ドルの罰金が科せられた。2014年にも、63件の市場の不正操作で総額26億ドルの罰金を支払っている。銀行の利益を上げる目的で行われる金融市場での不正操作などの犯罪は、司法取引では解決できないところまで来ている。

 

 金融システムにおける問題は、銀行の規模が拡大するにしたがい、金融市場に与える影響は大きくなり、金融危機の時の破綻リスクは高まることである。法制上の問題は、法の適応を受けないことで、その業界や社会において「法の支配」の概念が崩れることである。民間企業の間でも、「大きすぎて」経済に与える影響が大きいため、法の適応を受けない企業は多い。ドナルド・トランプやバーニー・サンダースの高い国民支持は、こうした腐敗した状況に不満や危機感を感じている国民の声を反映している。「大きすぎて起訴できない」銀行は「大きすぎて存在してはならない」となりつつある。