失われた20年の中で戦後の政治体制も綻びをみせ、産業も与えられた環境で育った高度成長時代から独立への脱皮が迫られている。あらためて日本の技術の特徴と強みは何だったのか、考えてみる必要がありそうである。日本の技術の本質は、絶え間ない改良と企業全体で取り組む開発姿勢は「カイゼン」に代表される。ハイブリッド製品に日本の技術の本質がみえると筆者は考えている。
ハイブリッド車
ハイブリッド車(HV)の王道、スプリット方式は、エンジンからの動力をメカニカルギアによる動力分割機構で分割し、発電機と車軸へ振り分けたり、両者を合体させスポーツ走行もできる。発進時や低速走行時にはバッテリーに蓄えられた電気でEV走行、通常走行時にはエンジンを低燃費回転域で使用し、ギアを介して発電機で同時にバッテリー充電を行う。プリウスはこのタイプの代表で燃費競争では常にトップに君臨して来た。
HVというと燃費を気にするマイカーのためのものと思われるがそうではない。瞬発力が特徴であるモーターと高回転での発生パワーにものをいわせるエンジンを組み合わせれば、運動性能を向上できるため、市販車(マクラーレン、ポルシェ、アウデイ、ニッサン、フェラーリ)やF1までが参入した。例えばフェラーリのHV(La Ferrari)は排気量6262ccV
12とモーターで、最高出力963hpを発生する。F1のエネルギー回生システムでは、減速時に回生したエネルギーをバッテリーに蓄えておき、加速時にモーターが加わる秘密兵器だったが、2014年度からは市販車同等の効率化を狙う。
多様性を増すハイブリッド
最近JR北海道が開発中止を決定した新型のキハ285系にはMA(モーターアシスト)ハイブリッド駆動システムという、ディーゼルエンジンとモーター、バッテリーなどを組み合ハイブリッド駆動装置が使われる予定であった。またそうりゅう型潜水艦は複数の動力源を持つパラレル方式のハイブリッドシステムでもある。
普段の生活にあるハイブリッド技術の典型は加湿器である。スチーム式の特徴は加湿能力にあるが、一方で気化式は静粛性とヒーターレスのための安全性で夜間運転に最適だ。両者を組み合わせたハイブリッド加湿器が人気である。
またNECが開発した指ハイブリッド認証とは、「指紋」と「指静脈」を組み合わせて認識能力を飛躍的に向上させたものだ。
ハイブリッドの本質ー和の精神
結局ハイブリッド技術というものは特定の方式の限界を超えようとする時に、他の手段を補助的に組み合わせて、能力を高めることである。日本の技術者は特定の方式に異常な執着心をみせて、時に失敗することも多い。一方で技術者の多くは常に競合する技術に目を配り、比較優位性を頭の中では理解している。競合と考えずにそれらを調和させようとすることは和の精神である。
日本の技術力の本質はこうした適応能力にあるのではないだろうか。恐竜が絶滅しても生き残る生命があった。適応能力が日本の技術の特徴であり強みでもある。