雑誌「WIRED日本版(9.10発売)」では地球を襲う異常気象(Extreme Weather)として6項目を挙げ、注意を喚起している。それらは一体どのようなもので何故注意が必要なのか、「WIRED」とは別の視点でまとめてみた。
Deadly Superstorm
2012に発生した超大型ハリケーンSandyは米国東部に上陸し、広範囲の洪水と停電をもたらした。このためニューヨーク証券取引所は2日間にわたってシャットダウンされて混乱を引き起こした。日本に接近する台風も近年は大型化の傾向に有り風速15km/h以上の暴風雨圏が半径800km以上のものを超大型台風と呼んで区別する。台風の強さは最大風速で区別され「猛烈な」と表現されるのは54m/s以上のものである。気象予報では「大型で」という大きさと「強い」などの強風の表現がある。
2013年の台風26号は「10年に1度の」という表現が追加される規模で、都心部の道路が冠水するなど都市機能をマヒさせたことは記憶に新しい。2012年までの台風発生数が2013年から増大する傾向がみられる。地球温暖化と台風の関係については断定はできないが、核となる熱帯低気圧の出現数は、地球温暖化に伴って増加する傾向があるとされる。日本における大雨の発生数が長期的に増加傾向にあるのは、地球温暖化が影響している可能性が高い。
誰でも台風が近づくと精一杯の対策をしてからは、TVの周りにあつまり情報をみながらやり過ごすと決まっていた。しかし現在は台風情報も高度化しスマホの普及でネットの情報を頼りにする。例えば「デジタル台風」というサイトには気象庁と米軍気象情報局の最新情報を可視化して表示してくれる。針路や規模の日米の先端技術を駆使したリアルタイム情報は頼りになる。
Super Derecho
Derechoという言葉は国内では耳慣れないが、米国では上陸後のハリケーンなど雷雨を伴う半径240マイル以上の巨大な暴風雨をさす。米国Storm Prediction Center, SPCの詳しい説明ではドイツ系アメリカ人の気象学者がつくった”Derencho”は気象情報では使われなくなっていたが、最近になってその特徴である1方向への暴風にあたる事象があまりにも多くなったため、復活したのだそうだ。Derenchoは毎時57マイル以上の風速の暴風雨であるが、中には130マイル時という強大な勢力を持つこともある。Derenchoの発生源はジェット旅客機も餌食にする「ダウンバースト雲」であり、近年の傾向として増大が地球温暖化によるかどうかは難しい議論のようだ。というのもDerenchoを発生させるには上空と地表の温度差が重要で、平均的な気温上層だけが影響する訳ではないからだ。中西部の農業に重大な影響を与えるDerenchoだが、国内でも局所的な一過性の暴風雨が増えているので充分な注意が必要である。スパコンのシミュレーションで国内竜巻の発生も再現できているので、近い将来はダウンバーストや竜巻情報も可能になるかもしれない。
Extreme Drought
米国西部の干ばつは深刻だ。カリフォルニア州では水不足で、使用量が制限され芝生に水をまくと罰金の対象になる。また古くから愛好家に親しまれて来たビールの銘柄Blue
Ribbonが操業を停止、ロシア企業の手に渡った。米カリフォルニア州と米南西部の草木を枯らす干ばつで、この地域を数年間にわたって干上がらせる恐れがでてきた。一方でシェルオイルの掘削には膨大な量の淡水が必要とされ、水不足、水格差は米国を悩ましている。
水不足は米国以外でも深刻で中国が日本の水資源を狙う動きが活発化している。またアフリカの慢性的な水資源の困窮は以前から問題であった。自国の水資源が危機を迎えてはじめて米国も本腰を入れ始めた感がある。カリフォルニア州だけの問題にとどまらず、干ばつは州を超えて拡大しており、現在は米国のほぼ半分が、異常な乾燥と干ばつに見舞われている。干ばつの影響はWIRED記事とマップを参照されたい。
日本の水関連技術が世界トップであることは良く知られている。福島原発でも最終的には国産ALPSが稼働し、核汚染物質除去に威力を発揮している。濾過用のフイルターや海水の淡水化技術等、でリサイクルをしなければ統計上の水不足は明らかで、今後の方向性がはっきりしている。廃炉技術や水リサイクル技術をシステムで輸出し、問題解決と利益を両立させることが必要なのである。また降水量の減少が地球温暖化の影響であり、気象ビッグデータと大規模シミュレーションで近未来予測をたて、それを克服する努力をいますぐ始めるべきだ。