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アメリカでは毎年5月の最終月曜日(今年は5月25日)は、兵役中に亡くなった兵士を追悼する戦没将兵追悼記念日(Memorial Day)である。アメリカはこれまで数多くの戦争や紛争に介入し、多くの犠牲者をだしてきた。
現在、アメリカには2,200万人の退役軍人がいる。第二次世界大戦を含めて多くの戦争と紛争で戦ってきた。振り返ってみれば実に第二次世界大戦終結からの70年間、アメリカが戦争に関与していなかったのは1976, 1977, 1978, 1997, 2000の5年だけである。
アメリカ建国の1776年から今日の239年間でみれば、実に222年も戦争や紛争に関わってきた。アメリカの歴史の93%は戦争の歴史ともいえる。どの時代においても戦争を全く知らない世代はいないのである。
オバマ政権の6年間で7カ国が空爆
「核なき世界の実現」、「イラクからの米軍撤退」、「北朝鮮とイランとの対話」などを訴え、「平和の大統領」としてアメリカ国民に選ばれたオバマ大統領は、2009年にノーベル平和賞を受賞した。だが、オバマ政権の6年間、アメリカは7カ国を軍事空爆している。国際外交より、戦争と軍事介入を遂行してきた。
「対テロ戦争」の名目で始まり、すでに15年続いているアフガン戦争が2014年12月末に在留米軍の完全撤退で集結すると思われた。だが、12月になっても、紛争は続いているだけでなく、完全撤退は2016年末と延期された。
パキスタン、ソマリア、イエメンでは、テロ組織の戦闘員や幹部の殺害をドローンで行ってきた。リビアでの空爆でカダフィ政権は転覆した。イラクとシリアでは「イスラム国」の拠点を空爆してきた。しかし、空爆によって多くの民間人の犠牲、インフラの破壊、経済混乱、政治的不安定を招いている。これほど多くの国での軍事介入を行ってきた米国大統領は初めてである。
ブッシュ政権の期間、米国の国防費は8年間で平均6,010億ドルであった。オバマ政権の7年間の平均は 6,870 億ドルに拡大、5月15日には2016年度予算での国家防衛認可条例で 890 億ドルの追加緊急戦争予算が下院で可決された。
今後、空爆に留まらずイラクとシリアでの地上軍を投入する可能性さえでてきた。「テロとの戦い」は終わりが見えない戦いだが、戦争継続が利益につながる勢力にとっては「戦争は終わってほしくない」のが本音である。
アメリカにとってテロとの戦いは勝利がない、脅威だけが増していく終わりが見えない戦いのようにみえる。ベトナム戦争の終結はベトナム戦争で命を失った多くの若い兵士や、戦争の目的を支持できなくなった国民による反政府運動が背景にあった。
中東での戦争の終結を呼びかける国内の反政府運動はほとんどない今、真の戦争終結よりアメリカの財政破綻による撤兵の方が早いかもしれない。
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アメリカの海外派兵で先陣を切るのは海兵隊。そのため犠牲も多い。写真は展開に使われるオスプレイ。イエメンでLuke Somers救出に向かったSEALSが運び出せたのは、彼の遺体であった。救出作戦には様々な制約で救出もリスクが高い。無事で戻った退役軍人に自殺者やホームレスが増えている。