デフレ時代のロケット−EELV

Dec. 25, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 EELV(Evolved Expendable Launch Vehicle)とは何か。まさにデフレ時代の申し子、使い捨てでコストを最低限に抑えたロケットシリーズである。膨大な燃料を消費し開発、製作、打ち上げ、回収、どれをとってもコストのかかるロケット産業でも長引く経済不況の影響は例外ではなかった。コスト削減にとられた戦略は開発と製造を国から民間へ委託することと、用途によって異なるスペックの違いに対応して、製作することをやめ、基本的なモジュールの組み合わせで、低価格ロケットを実現しようということであった。


モジュール化というコンセプト

 EELVは人工衛星打ち上げのために開発されたデルタIVおよびアトラスVを総称するもので、その歴史は米空軍が1994年の構想に端を発する。それは旧式化して高コストになっていた衛星打ち上げ用ロケットを低コストの新規システムに置き換える計画であった。


 モジュール化というコンセプトは画期的であった。中心となるのは液体燃料の「コアステージ(1段目)」、標準化された「上段ロケット」、固体ロケットの「ブースター」の組み合わせでロケットのセミオーダーメードが可能となる。設計は大手の宇宙産業(ロッキード、ボーイング、マクドネルダグラス、アライアント)が競争で参加し、ボーイングイ社がデルタIVをロッキード社がアトラスVを開発した。


 

国から民間へ

 EELVの打ち上げ事業も民間に委託され、製作から打ち上げまで民間が関わる宇宙ビジネスが花開いた。さらに有人宇宙船の打ち上げに対応するためにEELVの改良も計画され、ロッキードマーテイン社が開発するオリオン宇宙船の発射にも使用可能であった。いったんは財政難でオリオン宇宙船に予定されていたデルタIVの発展系アレスロケットは中止になったが、オリオン宇宙船は復活し、2014年12月5日にはデルタIVヘビーで打ち上げられて、軌道に乗り無事に帰還した。


 オリオン宇宙船の本格的な打ち上げにはデルタIVより大型のロケットが必要となるためアレスロケットを置き換えるSLS(Space Launch System)を開発する。SLSはアポロ宇宙船を運んだサターンV型と同等の打ち上げ能力を有する巨大なロケットだが、EELVの概念であるモジュール化とその組み合わせで発展性を持たせる精神は引き継がれることとなった。図にSLSの発展型を示す。


 

コスト削減の行方

 オリオン宇宙船の復活には多くのコスト削減の試みがなされている。例えば欧州宇宙機関の参加や貨物モジュール設計開発をエアバス社が担当することなど。中でもスペースシャトル方式と決別して使い切りの低コストロケットの採用が大きい変化である。モジュール化による採算性向上の道は自動車会社がプラットフォームを共有するのと似ている。コスト削減は宇宙産業にとってどのようなメリットとなるのか、今後の展開に注目したい。