米カリフォルニア州は歴史的な干ばつに見舞われている。今後、同州だけの問題に留まらず、全米の食料危機に発展する可能性さえある。
NASAの科学者ジェームズ・ファミリエッティの報告によると、 NASAの人工衛星による監視が開始された2012年以降、カリフォルニアの総貯水は減少しており、貯水池に残っている水の供給は約1年間分という警告をだしている。
米国の農作物供給に影響
カリフォルニア州で生産されている野菜、果物、ナッツなどの農作物は全米の50%以上を占め、牛乳、卵などの乳製品と食肉は全米生産量1位である。水不足で農産物収穫高が減少し、牧草や飼料の不足により家畜の飼育が困難になると米国で食料危機が起きることは避けられない。
2012年から中西部の干ばつに続き、2013年にはテキサス州、カリフォルニア州を含む広範囲に広がった。特にカリフォルニア州は2014年には、干ばつ緊急事態宣言を出し、住民の水の使用に当たっては節約による一定量の水配給や使用制限が実施された。干ばつはさらに深刻化しており、水不足による牧草と農作物の被害は本年度22億ドル、17,100人の失業者と広範囲にわたり農地に農作物が植えられない状況になる可能性がある。
干ばつの影響は全米の食料価格にも反映される。野菜、果物、作物、乳製品、食肉の価格が高騰しており、今後も価格上昇は続くとされる。特に高騰しているのは前年度比で12.5%上昇した精肉価格である。その中でも牛肉は20.4%も上昇、ビーフ好きなアメリカ人にとって牛肉は、贅沢食材になりつつある。
カリフォルニア州の中でも、米生産の97%、全米の20%を供給しているサクラメント・ヴァリーの干ばつ状況は特に深刻だ。そのため米栽培をやめ、農産物栽培に割当てられている水を1900万人の南カリフォルニア住民に供給しているロスアンゼルス地区水道局に売り渡す農家が増えている。それは、水の買取価格が1エーカー当たり去年より40%も高いからである。干ばつが深刻化すればするほど、水の権利の買取価格が上がるため、高い価格で水の権利を売り渡し、農地に農作物を植えない状況を生んでいる。この事態は、将来の食料危機を招く恐れを秘めている。下の写真はカリフォルニア州デスヴァリーの干ばつを示した写真。文字通り死の谷である。
汚染された貯水池
カリフォルニア州のセントラル・ヴァリーにある飲み水と潅水を供給している貯水池の大半が汚染されている疑いが浮上した。貯水池の水量が底をついたことから、州政府はシェールオイルとガス企業に掘削の際に排出された汚染水を貯水池に放出してもよい許可を出したことが今問題となっている。
環境保護庁(Environmental Protection Agency: EPA)は、昨年11の汚染水の排出を止め、地下水の汚染度の調査と監視に動き出した。今後、安全な飲み水の需要はさらに高まるなか、干ばつとは別に、安全で清浄な飲料水の供給が問題となる可能性がでてきた。