ギリシャにおけるトロイカ政策の教訓

Mar. 25, 2015

 

 ドイツのHans Bockler Foundation のマクロ経済研究所(Macroeconomic Research Institute)がギリシャの財政緊縮策が国民の所得、雇用、格差問題に与える影響をめぐり、衝撃的な調査結果を発表している。


 2008 — 2012年の4年間の税収と国民所得に関する260,000データを元に、ギリシャ財政緊縮策の影響は所得層によって異なり、高所得層より低所得層への影響と負担が大きいことを明らかにしている。所得、失業率、税金の面からどのような影響があったかを簡単に以下で紹介する。

 


所得の減少

 ギリシャ国民の名目総所得は4年間で、25%も減少している。大部分は給料のカットによるもので、増税の影響は9%であった。その中でも、低所得層の所得減少は86%と最も高く、高所得層の所得の減少は17~20%に留まっている。そのため、低所得層並びに中間所得層の貧困化が深刻化している。


 民間と公共セクターの間によっても、明らかに影響の違いがある。民間セクターの賃金や給料は平均19%減少したのに対して、公務員の給料カットは15%程度であった。

 


失業と早期退職

 2008年に7.3%であった完全失業率は、2014年には26.6%と上昇した。世代別で見ると、最も高い水準にあるのが、15~24歳の労働人口の44%である。


 早期退職者は民間セクターでは14%増加したのに対して、公務員の間では48%の増加があった。明らかに、財政緊縮策を実践するための公務員減らしの政策の影響がみれるが、早期退職者が増えたことで、社会保証や年金制制度にさらなる負担が掛かることになった。勤続年数が25年以上の公務員は、給料の減給や年金需給額のカットを避けるため、財政緊縮策を実施して間もなく早期退職を希望したのである。


税金

 直接税と間接税はそれぞれ53% と 22%上がり、ギリシャ政府は財政健全化のための増税収を図った。だが、結果は格差の拡大につながった。低所得層は高所得層よりも不釣り合いなほど大きな負担が課せられた。一世帯当たりの税金負担が337%増加したのに対して、高所得層の税金負担の増加はわずか9%であった。税制の面でも、所得層によっての税負担の格差大きいということである。


 ギリシャの場合には、根本的な問題である「税金を払わない習慣」や「脱税が当然といった意識」を変えない限り、財政の健全化は難しいと思われる。


 

 財務困難にある、イタリア、スペイン、ポルトガル、フランス、英国に加えて、ギリシャ財政再建のための追加融資の交渉相手のドイツにおいても、「トロイカ」が支援国に要求する財政再建や経済構造の改革が格差の拡大、貧困の拡大、失業者の拡大、経済不況を引き起こしていると批判の声が上がっている。



トロイカ:財政再建を支援・監視している3組織の欧州連合(EU)、国際通過基金(IMF), 欧州中央銀行(ECB)を指す。