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リングオブファイヤーを形成する太平洋沿岸の火山地域地震と火山活動が活発化している。火山地域や断層周辺での地震の理解に向けて、地震監視ネットワークによって記録されるビッグデータセットの効率的な解釈は地震の理解に不可欠で、信頼できる地震早期警報システムの開発が望まれる。カルテックの地震研究チームはAIを使って、複雑な地震波を識別し、強度、速度、方向をリアルタイム評価を目指しているが、ほかにもスタンフォード大、Google-ハーバード大、MIT、ロスアラモス国立研究所でAIの地震警報システム開発が活発化している。
最新のAIは、高度なハードウェアおよび機械学習アルゴリズムを搭載している。AIを活用した地震学データ解析能力は飛躍的に向上する。地震を早期に予知して被害を最小限にするAIによるビッグデータ解析は有望視されている。恩恵を受けるのは地震早期警戒で、地震が始まる前に数秒から数十秒前に警報を受けとることができることが望ましい。それには、地震を迅速に検出し、後で発生する揺れを予測する必要がある。日本では地震警報が携帯に送信されることがすでに普及しているが、精度は十分とは言えない。
地震波は最初に最も近い監視ステーションで観測されるが、それをすぐに認識すること早ければ早いほど、警報を出てから地震に備える余裕が生まれる。実際には地震かどうかを判断する時間は観測を含めて数秒間しかない。一方で誤認識は誤警報となる。
AIが地震監視システムの優れたツールになる理由は、ビッグデータを対象とするからだ。AIは、人間よりも速くより正確にビッグデータを解析することができる。また深層学習アルゴリズムの高度なパターンマッチング能力は、既存の自動地震監視アルゴリズムよりも優れている。下図は余震シーケンスのピーク時に単一の観測所で撮影された地震データのスナップショット。
Credit: Credit: Zachary Ross/Caltech
数年ごとに起こる大地震だけでなく毎日起こるバックグラウンドノイズと区別がつかない小さな地震もAIはパターン抽出が可能である。またニューラルネットワークを使用した深層学習で、過去の500倍の速さで地震解析を実行できるようになり、かつて何日もかかったものは今では数分ですむ。
ニューラルネットワークが地震の余震を予測する研究では、センサーが小型で安価になればなるほど、センサネットワークで大量の地震データを収集できる。ビッグデータをAIを使ってリアルタイムで評価し、震源と揺れ予報を出すことができる。
この地震警報分野で日本とメキシコは進んでおり、独自の早期警戒システムを持っている。カリフォルニアも整備に着手している。センサネットワークからのデータを解析するAIで精度を大幅に向上させることができる。下図は早く到達するp波監視ネットワークを用いた日本における地震警報システム。
Credit: ai-t.co.jp
しかしニューラルネットワークはパターンを見つけるのが得意だが、新しいパターンの信号を見つけるのには適していない場合もある。そこでロスアラモス国立研究所の研究チームは、「ランダムフォレスト」(注1)と呼ばれる機械学習技術が未知の信号を識別できることを実証した。以前は無意味だと考えていたデータに潜む信号から、実際には地震がいつ到来するかをAIが判断してくれる日も遠くない。
(注1)機械学習のアルゴリズムのひとつで、Decision Treeによる複数の弱学習器を統合させて汎化能力を向上させる学習アルゴリズム。
加速器衝突実験や医療イメージング分野で成功を収めつつあるAIによるビッグデータ解析は、リングオブファイヤー沿いの危険な地域の地震予知で威力を発揮するだろう。