有機エレクトロニクスの効率が倍増

15.01.2019

Credit: Alexander Colsmann, KIT

 

スウェーデンのカルマース工科大学の研究者チームは、有機エレクトロニクスの効率を2倍にする高分子のダブルドーピング技術を開発した。 OLED(有機発光ダイオード)、このダブルドープ高分子によって有機系太陽電池およびバイオエレクトロニクスが、効率が倍増する(Kiefer et al., Nature Materials online Jan. 14, 2019)。

 

電子機器の大部分は、シリコンなどの無機半導体回路に基づいている。半導体にとって重要なのはドーピングと呼ばれるプロセスであり、これは不純物を半導体に挿入してその導電性を高める。このプロセスは太陽電池やLEDスクリーンなどの電子デバイスに欠かせない重要な材料の前処理であるが、有機化合物半導体でも同様に重要である。 

 

2000年にノーベル賞が授与されたる導電性高分子の発見以来、有機エレクトロニクスの研究開発は急速に加速している。 OLEDディスプレイはiPhoneXRなど最新世代のスマートフォンに実装されているが、有機半導体が効率が十分ではないため、他の用途はまだ普及していない。

 

有機半導体へのドーピングは、酸化還元反応で、ドーパント分子が半導体から電子を受け取り、半導体の導電率を高める。ドーパント分子が多いほど、導電率は高くななるが限界があり、その後導電率は低下してしまう。例えばポリアセチレンへのハロゲンドープで伝導度が飽和してしまうのは二重結合が分断されて導電性が妨げられるためである。ドープ有機半導体の導電性限界は、ドーパント分子がそれぞれ1つの電子しか交換できないためである。

 

研究チームは、2つの電子をすべてのドーパント分子に移動させるダブルドーピングはフレキシブル有機太陽電池を始め、有機エレクトロニクスの効率を倍増させることを見出した(下図)。

 

 

Credit: Nature Materials

 

これまで分子全体で酸化還元反応が1回しか起こらない材料が用いられてきたが、研究チームはイオン化エネルギーの低い別の種類のポリマーを選択した。これによって、成功しているOLEDディスプレイ以外の有機エェクトロニクスの普及が加速するものと期待されている。

 

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