南大西洋で弱まる地球磁場

08.02.2019

Credit: ESA/DTU Space

 

地球磁場の北磁極移動が加速しているなかで、もうひとつ注意しなければならない地球磁場の異常が、チリからジンバブエまで広がる広大な「南大西洋異常」である。この地域では、磁場が非常に弱いためヴァンアレン帯が地球に接近し宇宙線シールドが弱く、この地域での高い宇宙放射線が衛星の電子機器を破壊する恐れがある。地磁気異常の解明は磁極の弱体化と磁極逆転についての理解につながると考えられている。

 

南大西洋異常とは

南大西洋異常(SAA)は、南半球で弱まった地球雨磁場によって増加した放射線の強い地域である(下図)。過去160年間にわたって起こった地球の磁場の弱体化はアフリカ大陸の約2,900キロメートル下にある広大な緻密な岩の貯留層の異常な移動が原因で起こっていると考えられている(下図)。

 

 

Credit: Nature

 

地球の外側のコアにある溶鉄とマントルのより硬い領域との間にあるこの緻密な領域は、磁場を作り出している溶鉄の流れを乱す可能性がある。南大西洋異常では、地球の内側のヴァンアレン放射線帯が地球の表面に最も接近して高度200kmまで接近している地域である。

 

この「リソスフェア磁場」はこれまで検出するのが困難だったが、Swarm衛星で可能になった。観測でつくられた地図は、リソスフェア(注1)の深さ250 kmまでの磁場を可視化する。Swarm衛星は地球の磁場を監視するためにESAによって打ち上げられた3つの衛星から成る。衛星観測で得られた地図でバングイ 中央アフリカ共和国に代表される磁場異常地域が明らかになった。

 

(注1)岩石圏、岩圏とも呼ばれ、地球の地殻とマントル最上部の固い岩盤を併せた部分の総称でプレートとほぼ同じである。

 

磁場を作り出している溶鉄の流れを乱す異常の原因はまだわかっていないが、5億4000万年前の隕石衝突に関係する可能性がある。地磁気ハザードマップは地球の極を逆転させるための重要な手がかりを提供する。火山活動に起因する金属層の配向方向(古磁気)を考慮すると、磁極の変化の歴史がより明確になる。衛星データと地上観測網を連携し古磁気を参考に地球磁場の現在につながる歴史を理解するということは、地球環境の未来予測につながる。