励起子ポラリトン発光の新展開~カイラル表面励起子

19.02.2019

Credit: Hsiang-Hsi (Sean) Kung/Rutgers University-New Brunswick

 

ラトガーズ大学の研究チームは、粒子と反粒子が互いに結合し、固体の表面上で互いに回転する励起子ポラリトンが、トポロジカル絶縁体でその回転を制御できる「カイラル表面励起子」となることを発見した。「カイラル表面励起子」は円偏光の回転方向が制御できる発光デバイス、太陽電池、レーザー、電子ディスプレイに応用できる可能性が注目されている(Peng et al., PNAS 113, 6845, 2016)。

 

カイラルとは、左右の手のように、一致するが非対称であり、その鏡像に重ね合わせることができないものを指す。固体に強い光が当たると励起子が形成されて、電子が飛び出し、正孔が残る。この励起電子は最終的に正孔に向かって螺旋を描き、フォトルミネッセンスを放出しながら、瞬時に消滅する(励起子ポラリトン発光(C. Weisbuch and R. Ulbrich, Phys. Rev. Lett. 39, 654 (1977)))。

 

励起子ポラリトン発光の現象自体は古くから知られており、励起子ポラリトン発光は、太陽電池、レーザー、テレビ、その他のディスプレイなどの発光デバイスに応用できるため、理論的にも1966年以降(J. J. Hopfield and D. G. Thomas, Phys. Rev. 132, 5 563 (1963))、多くの光物性研究者たちによって活発に研究されてきた。

 

ラトガー大学の研究チームは特殊な物質(トポロジカル絶縁体)では特異点(非エルミートスペクトル縮退)のまわりで円偏光の回転方向の動的制御が可能になることを発見した。その後2018年にはハーバード大学の研究チームが励起子ポラリトン量子流体におけるカイラルモード渦流の概念を発表し、非エルミート型リング共振器の2つの双極子モードを縮退させることによってカイラルモード渦流が発生することが示された(Gao et al., Phys. Rev. Lett. 120, 065301, 2018)。

 

研究チームが2016年に発見したトポロジカル絶縁体(セレン化ビスマス結晶)表面での励起子ポラリトン発光は、新しい発光デバイスやレーザーへの応用が期待されている。