Credit: Oxford University
オックスフォード大学の研究チームは、世界最高記録密度で光学データを保存できる新しい技術を実証した。光を用いてデータの書き込みおよび読み出しを行う相変化型光メモリセルを改善したことで、従来より飛躍的に高速でかつ省電力の計算機メモリが可能となると期待されている(Li et al., Optica 6, 1, 2019)。
研究チームは、5ビットに相当する32の状態を記録する光メモリのプロトタイプを実証した。光ファイバーで伝送される符号化されたデータは計算機に接続される際には、電気的信号に変換するインターフェースが必要だった。計算機回路基板が光信号を直接読み取れれば、情報の送受信の高速化が可能になる。そのためには光学的および電気的なデータを受け付けるハイブリッドチップの開発が鍵となる。
書き換え可能なCDおよびDVDの光メモリセルは相変化材料を用いている。その原理はレーザーで相変化材料の一部を加熱し、結晶構造を規則的または不規則な状態間で切り替えてデジタル情報を記録する。これらの2つの状態は異なる屈折率を示すので、光を用いてデータを読み取ることができる。
相変化材料はレーザー光で再び照射されるまで、無秩序または規則正しい状態を維持するので、長期間にわたってデータを保存することができる。研究チームは原理的には、情報をゼロおよび1の代わりに連続したレベルで記憶することで、仮想的な記録密度を増大できる点に注目した。
研究チームは、フォトニックフォトニック導波路に集積されたGe2Sb2Te5の溶融と結晶化を正確に制御するために、ダブルステップパルスのレーザー光を使用して0と1の間の中間状態を使うことで、記録する分解能を向上させた。単一のレーザーパルスによる加熱ではなく、時間の経過とともに材料の温度を制御できるようにパルスを成形したことがポイントである。加熱後に到達する状態を調整することで、記録密度の大幅な向上が可能であることを実証した。
研究者チームは、5ビットプログラミングを実現する32状態以上のデータ記録に成功した。この新しい技術で今日の計算機の速度を制限するボトルネックの1つ、プロセッサとメモリ間のリンク速度を克服することができる。今後は複数の光メモリセルを統合するための光信号処理技術を開発する必要があるが、光メモリとハイブリッドチップで計算機の速度は飛躍的に高められると期待されている。