相次ぐ大手自動車メーカーの国外工場撤退

20.02.2019

Photo: nasdaq.com

 

 ホンダは英南部スウィンドン工場での完成車生産を2021年中に終了することで従業員3500名の雇用がなくなることが波紋を呼んで外交問題に発展している。ホンダは同時にトルコでも生産を終了し、欧州生産から撤退するが、国外工場撤退はホンダだけではない。フォードは、南アメリカ(ブラジル)の大型トラック事業から撤退し、2,800人の雇用が失われる。

 

 閉鎖される工場は、大都市サンパウロの南にあるサンベルナルド・ド・カンポにあり、大型トラック、ピックアップトラック、および小型車を製造している。フォードは1967年から稼働しているブラジルの国外工場閉鎖は、グローバルビジネスの包括的な再設計の一環であるとしている。

同社は、南米では、給与コストの削減、人気の高いSUVとピックアップの製造強化、および商用バンと中型ピックアップの共同開発のため、フォルクスワーゲンとの先月の発表などのパートナーシップの拡大に軸足を移していた。

 

 サンパウロ工場を2019年中に閉鎖すると、4億6,000万ドルの一時的な費用が発生し、その大部分は労働者、ディーラー、およびサプライヤとの契約を終了させるための補償費である。

 

 先月、フォードは、増収にもかかわらず、中国とヨーロッパでの低調な業績を受けて、112百万ドルの第4四半期の損失を報告した。フォードがこだわったのは「収益性」と「スリム化」である。昨年、フォードは売れ行きの悪いセダンと小型車の生産終了で110億ドルが節約できると発表した。南アメリカだけでなくフォードは欧州事業の再編も発表している。

 

 フォードの決定は、投資と産業を育成する政策を掲げるトランプ大統領と相反するものであるが、「儲からなければ商売はできない」という原則に忠実に従った結果である。日立製作所が先に、英国での原子力発電所の建設事業を凍結する発表を行った際に、根拠の説明に使われたのがこの大義名分である。

 

 これから加速する国外工場閉鎖の動きは、グローバリズムの潜在的リスクが現実化したことを示唆している。もちろん現地に強力なパートナーが現れれば、原子炉も自動車工場も存続の選択肢があった。しかし低賃金を理由に選んだ国々は例外なく疲弊していて、余力はない。内在していた無慈悲なパラドックスに気づくのが遅すぎた。