動き出した世界的なデジタル課税の潮流

18.12.2018

Photo: bfm

 

 カリフォルニア州規制当局は、携帯電話でのテキストメッセージの料金を請求する計画を放棄した。一方、フランス政府は、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの名にちなんで名付けられたいわゆる「GAFA税」による欧州の巨大事業に課税を決定した。ふたつの新しいデジタル課税立法の明暗が分かれたが、将来、情報サービス利用そのものが、課税対象となる可能性が否定されたわけではない。

 

背景にある不公平なIT巨大企業への課税

 現在の法人税法では、物理的な商品売買に課税されるため、GAFAは、非常に低い税金を払って欧州で莫大な利益を生み出している。例えば、Facebookは最近、英国で1,580万ポンドの税金を支払っていると発表した。しかし課税対象総額は13億ポンドであり、税額控除後のFacebookの最終請求額は740万ポンドで、全体の売上高の1%未満にしかならない(下図)。

 

Credit: companydebt

 

 このような不公平を是正するためのデジタル課税計画では、約200億の企業が課税対象となる。現在の基準では、IT企業の平均税率は約9.5%であり、一般の事業の場合は23.2%となっている。英国は独自のデジタ課税計画では、2020年4月から2%の2億ポンド以上の利益を上げたハイテク企業に税金を課すことになる。

 

カリフォルニア州のテキスト税

 カリフォルニア州公共事業委員会は、連邦通信委員会(FCC)の判決が文字通信を情報サービスとして分類し、通信サービスではないと分類したことを受けてテキストメッセージを通信としてみなして課税する立法を諦めた。連邦通信法は、情報サービスに対する州の権限を制限している。

 

 州政府関係者は、このデジタル課税の収入(年約4,450万ドル)は、貧しい人々が電話サービスにアクセスできる支援プログラムの資金に使う「目的税」と説明している。この計画に反対している通信業界は、規制当局の提案で、5年間適用される可能性があり、カリフォルニア州の消費者は5年で2億2,000万ドルを超える負担になる可能性があると述べた。

 

フランスのGAFA税

 ブルノ・ル・メアール財務相は、EUが来年、1月1日からインターネットおよび関連企業に対する独自の税金、「 GAFA税」を課税すると発表した。「 GAFA税」とはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの名にちなんで名付けられた新しい欧州の巨大IT事業に課税される税金で、2019年は5億ユーロ(5億7000万ドル)と見積もられる。

 

 フランスは、直接販売に課税することに加え、企業に「広告収入、ウェブサイト、個人データの再販」に関する課徴金を支払うよう求める。EUの法律では、GoogleやFacebookのような米国IT大手は、アイルランド、オランダ、ルクセンブルクなどの低税率の国を選ぶことができる。巨大IT企業は平均して9%の賦課金を支払うが、他の事業の23%と比較して、低い税率に不満が高まっている。

 

 先にあげた英国の他に、スペイン、イタリアなどのEU加盟国もデジタル税に取り組んでおり、日本、シンガポール、インドも独自のスキームを計画している。デジタル課税を巨大IT企業が世界各国で回避できなくなるのにはそう時間がかからないとみられている。圧倒的な不公平性が取り除かれることで、財政が潤うのだからこの課税はIT巨大企業を除けば支持されるだろう。しかし問題はカリフォルニア州のように拡大解釈して、サービス利用者までが課税対象になれば、通信料金に上乗せされて利用者負担に行き着くことになり不公平さの是正と逆行する。

 

 

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