フランス国民に支持される反政府デモ

27.11.2018

Photo: news.detik.com

 

 17~18日のフランス市民による大規模な抗議デモに続き、24~25日の週末もフランス全土で抗議デモが行われた。規模は前週の約半分の106,000人ではあったが、デモの中心はパリ市内となり、シャンゼリゼ通りには約8,000人が集結、警察と激しく衝突した。道路のバリケードは放火、高級ブランド店のショーウィンドウは破壊され、信号機も破壊されて、シャンゼリゼ通りは騒然となった。デモ隊の行動はエスカレートして暴徒化した現状には沈静化の兆しがみえない。

 

変質した黄色のベスト抗議運動

 今回の「黄色のベスト(gilets jaunes)」抗議運動はこれまでの抗議運動と違い、政治政党や労働組合といった特定の組織が始めたものではなく、運動を指揮する特定のリーダーがいない草の根運動である。当初燃料増税に反対する運動を目的とする運動も、次第にマクロン政権の政策に反対、不満を持つ一般市民の関心と参加を集めている。

 

 フランスではこれまでも、増税と燃料コストが高騰した時期、1995年、2000年、2004年、2008年に市民による抗議デモが起きている。しかし、今回の抗議デモはマクロン大統領の辞任にまで追い込む勢いの運動に発展する可能性がある。マクロン大統領が選挙公約とした、雇用の創出、賃金の引き上げ、公共投資の増加、安定した社会保障など市民の生活向上や経済を上向かせる政策を実現していないことに不満を持ち、生活状況の悪化や貧困化を実感している人々が増えているからである。

 

支持される反政府デモ

 抗議デモへの支持も拡大している。11月24日に実施されたOdoxa世論調査では、10人中8人が抗議デモを支持、78%は一般市民の生活を守るための手段としてデモを正当化している。また、右翼派の国民連合支持者の83%は抗議デモを支持、社会党から分裂した左派党の「La France Insoumise(服従しないフランス)」支持者の92%が支持していることから、政党を超える支持が集まっていることがわかる。

 

 地球温暖化対策としての燃料増税と炭素税に反対する「黄色のベスト」抗議運動を単なる「道徳の危機」と片付けたマクロン大統領に国民は反撥した。燃料増税に反対する背景にある国民の政権に対する不満に理解や解決策を示さない政府にますます批判が向けられることになった。

 実に2002年から2017年の間、国民に対する増税による負担は毎年250億ユーロ(約3兆2000億円)増えている。今回の燃料費増税は15年間続いてきた増税に対する最後に追い打ちをかけた、我慢の限界を超えた国民の怒りといえる。

 

 燃料増税と炭素税に反対する立場での反政策デモだった「黄色のベスト」抗議運動はマクロン政権の失策と国民の声を真摯に受け止めないマクロン大統領の態度で、憤懣が一気に噴き出した感がある。

 

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