サンタナから始まったVWの中国進出

Photo: Car News China


世界一位の販売台数を争うVWは中国にいち早く工場をつくり、中国国内に大衆車(昔のドイツでいえばビートル、とかワーゲンとかいわれる)を浸透させた。


1984年に上海フォルクスワーゲンという会社を設立してサンタナ(上の写真)が街にあふれた。筆者の印象では1990年頃の中国の都市でみかけるのはこの車が多かった。


トヨタでいえばカローラに相当するこの車は頑丈なのでタクシーに採用され、今でもその名残でこの車種のタクシーが走っている。


足回りはカローラと違い欧州車のそれで硬い、硬すぎて不快な乗り心地だった。またカローラと違い快適設備は皆無で、ひたすら走れれば良い、という設計だった。


しかしVW社が2014年に過去最高の売り上げと経常利益をだした背景には、この車を中国御用達として徹底的に普及させて販売網を確立したことが大きいと筆者は考える。


現在の上海市を走るとさすがにサンタナをみつけることが難しくなって、黒塗りのセダンにはAudiA6が多く、BMWもトヨタクラウンもフーガも走っている。


どんな企業にも成功の陰には隠れたヒット製品で顧客を掴むフェーズがあるのだが、VW社でいえばこのサンタナであろう。ちなみにサンタナは1984年から1988年まで生産され、パサートにバトンタッチされている。


FFのサンタナは日産がライセンス生産をしていたこともあって、時々みかけるときもあり中古車市場でも取り扱っている。


足回りが日本向きではないためか、販売は不振であったが中国特に上海市では一時は走る車のほとんどがサンタナだった時代がある。


中国人のセダン好きは有名だがいまは黒塗りのパサートがお気に入り。VW社は中国市場で体力をつけたことは間違いない。販売が好調でアウデイやポルシェを取り込み他のドイツメーカーより幅広いラインアップで、米国、日本を次のターゲットにするところで、排気ガス不正問題で足元をすくわれた。


しかし中国で排気ガス問題に感覚が慣れてしまっていたとしたら、不正の壁も低かったのだろうか。名車とは言い難いが稼ぎ頭だったサンタナはVW社にとっては、販売を伸ばす重要な足がかりであった。