ブラジル奥地の仏教徒

 

 

 ブラジルの奥地は見たことがないものがある。ここはブラジリアから車で6時間はいった高原である。観光地らしいのに民宿が少しばかりで、見渡すとWINDOWSの背景画面のような緑の丘が広がる。

 

 その郊外は森と滝がいっぱいあってハイキングにもってこいの場所である。アドベンチャーの基地となるこの民宿は年寄り夫婦が経営している。

 

 仏教徒だといっていたとおり、庭の中に寺院らしい建物がある。これが彼らの解釈による本堂。それらしくないこともないが、それらしいかどうかはこの地ではどうでも良いことに思えて来た。

 

 細かいところにこだわらないのはブラジル人というか、ラテン系の特徴だし、この個人的な寺院は宿の夫婦ふたりだけのものなのだから、彼らにとって崇高な場所であればそれでいいのだろう。

 

 民宿の部屋は快適ではないのだが、夜はパテイオで宿泊客が一緒にBBQとなる。ご存知のようにブラジルのBBQはシュラスコのように、食べ放題である。グリルのが大好きな私にはこの上ないふるまいである。

 

 そしてBBQのもうひとつの楽しみは一緒に出されるご主人特製のカイピリーニャである。このカクテルはライムと砂糖が同じくらい放り込まれてつくられるので、甘い甘い。

 

 しかし何故かこのカクテルを飲み続けると楽しくなりどんな不幸も吹っ飛んで、世界が輝きだす。そうなった人(つまり酔っぱらいたち)は次々に庭に出て行って、あちらこちらが笑い声でけたたましくなる。

 

 夜空をみあげれば真上にみなれない星座が。南十字星である。こうして夜が深まっていく時間はゆったりと流れて行く。

 

 この地の周辺は貧しい人が多いが、彼らにとってお貧困であってもこのようなマジックで楽しそうに生活している。恋人たちはスターバックスやデイズニーランドのデートはないが、森の中にある二人だけの滝壺で泳ぎ楽しそうだ。

 

 この民宿の夫婦も仲が良く、週末には息子夫婦が戻って一家のバンド演奏で宿泊客を交流するのが楽しみだといっていた。