リドリーの描くエクソダス


























 リドリースコットのブレードランナーは大好きな作品だ。それ以外にも彼の作品は私の中で記憶が深い、ブレードランナーの面影はプロメテウスに引き継がれているが、その前にも映画史に残る傑作が少なくない。


 評価が分かれるがインパクトの大きさで誰もが認めるエイリアン、日本の根底にある矛盾を鋭く描いたブラックレイン、今回のエクソダスと共通するスペクタクル、グラデイエイターやキングダムヘブン、社会派としての鋭い目で戦争を描くブラックホークダウン、アンソニーホプキンスのサイコぶりが怖いハンイバル、などなど。


 彼の描くスペクタクルはキャメラワークが素晴らしい。接写からカメラが引いて圧倒的な存在感のあるパノラマに展開すると、見るものはその場面にすいこまれる。


 エクソダスでモーゼが率いる群衆が海を渡ろうとする時に海が割れた有名なシーンはこの映画のクライマックスであるが、リドリースコットは「十戒」のように、海が割れる描写ではなく引き潮の描写とした。


 したがって息をのむ海が避けるシーンはない、がそのかわり潮の引きで海底が露出するという科学的?な描写は現実的かもしれない。


 シシリー島の海岸は美しい。そこは浅瀬で本土から引き潮時に軍隊が渡った、という話をきいた。信じられないが遠浅であることは確かである。


 またモンサンミッシェルへの道は引き潮で露出する。ラムゼスが満ち潮を無視して軍隊を突入させたのかも知れない。


 モーゼの人間的な側面がよく描かれているが、聖書で重要なシーンのいくつかはカットされていて後から副題であり「神と王」がついたことから、わかるようにテーマは異なる生き方を選んだ異母兄弟の生き方の問題のようである。


 異なる生き方で衝突する兄弟の話ならいくらでもある。現実を置き換えて描きたかったのではないだろうか。いつの時代でも悲劇は欲望から生まれる。