欧州で鍛えられるセキュリテイ度-Part1

 

 南欧州つまりラテン系の国では都市の人ごみに常に危険性がある。"Beware of Pickpocket"の警告は繁華街に溢れ、デイスコやコンサートでも上の写真のように、人々に注意を呼びかけている。

 

  欧州のスリは「ローテク」だが、年と場所と時間で変化する厄介なものである。米国のMuggerと違うのはお金を持っていなくても、殴られることはない点であるが、周囲に気を配る習慣をつけるレッスン料は結構なものだ。

 

 これから事例を挙げて解説するが、セキュリテイのスキルアップに繋がれば幸いである。なお全て実際に筆者に起こった体験談である。ジプシーの活動と関係することを後から知ったが後の祭りだった。

 

 パリのシャルルドゴール空港にはJFKと並んでアフリカ系黒人が多い。あるときモデルのような若い黒人女性の前で税関審査を待っていた。その女性がささやいた。私は手荷物で一杯、両手がふさがってるから、靴を持って欲しい、と。こういう時には丁寧に断る必要があることは知っていたので、難を逃れた。税関審査で自分で持っているものは所有していなくても全責任がある、のである。

 

 この時に同じ飛行機に偶然、友人が乗っていた。二人とも乗り継ぎの便の関係で、4-5時間の時間つぶしが必要になった。パリに住んだことがある友人は得意げに、凱旋門周辺を案内する、というので一緒にシャンゼリゼ通りに出かけた。

 

 人気のカフェで優雅に一息いれた我々は凱旋門にでかけた。凱旋門を眺めて写真を撮る日本人は格好の獲物だったのだろう。2-3人のジプシー少年たちに取り囲まれた。一人がプラカードを取り出して叫びだしたが1分後に、急に静まりクモの子を散らすように走り去り、地下鉄に逃げ込んだ。

 

 私は友人に財布があるか尋ねてみた。案の定彼は財布がとられた、という。その時には子供は地下鉄に消えようとしていた。ダッシュしたが地下鉄に逃げ込まれたら見つけ出すのは不可能であった。友人はこの時、旅行ついでに米国に住んでいた奥さんを尋ねるため財布に40万円入れていた。

 

 当時の私は独身貴族だったので、渡米に必要な現金をその場で彼に工面した。奥さんと合流できる彼の喜んだ顔が忘れられない。おそらく奥さんは怒りまくっただろうが、パリに住んでいたといっても油断できない。ジプシー活動は太陽の黒点活動のように周期的に欧州を襲う。

 

 これが欧州の危険を目の前でみた最初の事件であった。これは大きな衝撃だったがすぐに学習の効果がむなしかったことがその後すぐ明らかになる。