全電源喪失の備え

 

気がつけば身の回りに増えて行くUSB機器。上のようなチャージポッドも必要になって来ている。

 311地震で福島原発が機能不全に陥り間もなく一部は水素爆発を起こし、3基はメルトダウンしたが、耳にするのは全電源喪失が津波で起こった、ということだ。実際には津波の来る前に送電線が倒壊して送電線が切断された時に全電源喪失が起きたのである。全電源喪失に際しては非常電源が起動することでバックアップされるのだが、それが津波で使えなかった。論理的には非常電源設備の浸水で、...というべきである。

 

 非常電源の設置場所に問題はあったにせよ、長期に稼働したかは疑わしい。それはさておき、ここでは家庭において全電源喪失の対策はできているのか、ということである。普段から停電の多い国では夜間停電しても慌てず、蝋燭に火をつけて、またかと眉をひそめるだけのことだが、電気のない事態などあり得ない、と勝手に思い込むことの方がおかしいのかもしれない。

 

 日本の送電網のredundancyは先進国でもずば抜けていて電力会社には工学部のエリートを擁し高度な送電網を維持できて来た。しかし最近の自然災害はそのたびに100年に一度、のスケールであり、近年当然のように思い込んでいた全電源喪失の陰が忍び寄っているように思える。

 

 この機会に我が家の全電源喪失の対策を箇条書きにしてみたらいい。数時間から数日までの対策を考えるのも良い。電気を買うから造る時代にさしかかっている。車の所有率が1台以上の郊外では車で発電したバッテリーをインバーターで使うのが現実的であろう。ちなみにスマホの充電には携帯用のモバイルバッテリーが便利である。私の場合、ANKER Astro3 2Gの12000mAが重宝している。スマート出力を含む合計USB3出力でiphoneのフル充電が4回可能だ。家にあるエネループから自動車バッテリーを含む全てのバッテリーの一覧表をつくっておくと慌てないですむ。携帯やラジオはモバイルバテリーで充分である。

 

NY大停電の教訓

NorthEast Power Failure 2003の衛星写真
NorthEast Power Failure 2003の衛星写真

 

 2003年のNY大停電はNorthEast Power Failureと呼ばれる。停電前後の衛星写真を比べてみると、東部地域に広がる停電が大規模であったかがよくわかる。

 

 これをきっかけに米国の送電網の脆弱製が指摘され、スマートグリッドの動きが急速に活発化した。停電地域ではほとんどの公共交通機関が麻痺し、NY, Cleveland, Detroit, Tront, Ottawaなどの大都市では、車道を歩道化し、交通麻痺となった。原因は、送電管理システムのダウンが雪崩現象的に連鎖して起こったとされ、米国の送電網の弱点が浮き彫りになった。その後、変電所を狙ったテロ攻撃も計画され、直前に食い止められた事件も起こった。

 

 都市の停電の要因は自然災害をみても、強風や地震で送電線が倒れたり、河川の氾濫、集中豪雨で地下ケーブルが浸水、落雷、など多くのリスク要因がある。またEMPで一時的に金属に大電流が流れれば、制御システムがダウンする。このような場合にはエレベーター、エスカレーターが一時的に止まるので、乗っていれば暗闇で密閉状態になる。

 

 最も注意したいのは落ち着くことであるが、予想していないことに出くわすとパニックに陥り、それは伝搬する。しかし停電もあり得る、突然、真っ暗になったらどうするのか、普段からシミュレーションしておくと、ああやっぱりきたか、と思い、パニックは避けられる。エレベーターが停止した際の行動規範は次のようなものである。

 

 日本にあるエレベーターの約95%がロープ式である。新しいエレベーターはロープ式でまず何が起こっても(ロープが切れても、)落下する事はない。停電でもインターホンで管理会社に連絡が可能である。真っ暗になったらスマホのdisplayを使えばとっさの場合には充分な照明が得られるのでインターホンを探そう。また地震を感知すると最寄りの階まで自動で進んで止まり、ドアが開放される。運悪く閉じ込められても落ち着いてインターホンで連絡をする。

 

 冷戦時に米国の小学校では号令とともに机の下に隠れて頭を保護する訓練をやっていた。そうして育った世代は"Get Down"の一声で自然に体が反応してしまうそうだ。そこまでいかなくとも停電くらいでパニックにならないように、普段から心構えをしておこう。

 

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コメント: 1
  • #1

    太郎 (金曜日, 25 7月 2014 14:59)

    停電をランダムに数分間毎都市1回程度、つくり予行演習したらどうでしょう。
    子供は学習が早いので充分に訓練できます。
    災害の日、時間指定なし、でもいいです。
    とにかく日本は訓練がいいかげんですからいざというときに役に立たないんだと思います。