「量子もつれ」状態にある光子対発生

31.03.2017

Photo: Phys.org

 

イースト・アングリア大学の研究チームは異なる場所から光子対が発生する新しいメカニズムを見出した。これまで同一の場所で起きるとされていた光子対生成が異なる場所で起きる可能性を示した今回の発見は「量子もつれ状態」など量子物理の新展開につながる画期的な発見と考えられている。

 

接近した2粒子の一方に与える影響が、その粒子のみならずもう一方の粒子にも影響する「量子もつれ状態」は量子計算機の原理として、勢力的に研究されている。イースト・アングリア大学の研究チームは結晶に入射する光子ビームが「量子もつれ状態」にある光子対を発生するパラメトリック下方変換(Parametric Down-Conversion、PDC)(注1)で下図下段のように異なる場所での光子対生成を見出した(Phys. Rev. Lett. 118, 133602 (2017))

 

(注1)発生する光子対が入射エネルギーを「共有」する時(縮退時)に、光子が物質との非線形な相互作用で、2つの光子対を生成する。この現象の前後で、物質の状態が変化せず、光子の持つ運動量とエネルギーが保存される。

 

 

Credit: Phys. Rev. Lett.

 

 これまで光子対発生は同一場所(上図上段のA)で起こると考えられていたが「量子もつれ」状態にある2個の粒子(A、B)は等価であり、片方(A)に起きるはずの光子対発生がもう一つの粒子(B)で起きる。

 

「量子もつれ(Quantum Entanglement)」とは、異なる場所にある粒子のスピンなどの量子状態が独立なものでなく、他と状態を共有する状態をいう。そのため一方の状態のみを他に影響を与えずに変化させることができなくなる。この原理を応用して情報単位(qbit)を表現したり暗号通信に利用することができる。

 

今回の発見によって「量子もつれ」状態の理論解明が進めば量子計算機の開発に役立つ。また接近した粒子の区別が意味を持たない(原理的に特定できない)空間分解能の限界についても重要な知見を与える今回の結果は量子物理学の発展につながると期待される。