衛星データ活用で進化するプレートテクトニクス

25.02.2017

Photo: tre-altamira

 

地震の起源は岩盤のずれであり、プレート同士の衝突や蓄積された歪みエネルギーの解放とされる。しかし発生メカニズムは個々の地震で異なるので詳細は不明な場合が多いし、テクトニクス地震予知は確立していない。実際、火山と大地震の分布がRing of Fireと呼ばれる太平洋を囲むプレートの境界に一致することもよく知られているが、プレート内での地震活動もありメカニズムは多様性に富む。

 

この20年で衛星データの活用でプレートの歪みの知見は飛躍的に深まっている。衛星データで地表の裂け目の観測や断層とずれのマッピングと地震の関係を調べることで、地震と起源となる断層の関係から将来歪みが引き起こす地震リスクの評価が可能になった。衛星データの活用によって地表の変形モデルの時間依存が得られ、長期的な断層形成とプレートの変動を知ることができる(Nature Comm. 7 13844 (2016))。

 

プレートテクトニクスという学問はプレートの変形を研究対象にして、地殻の歪みの分布を支配する岩盤の挙動を理解することが重要である。地殻の動きの結果として冷えて流動性のなくなった地球表面の地殻に蓄積される膨大な歪みエネルギーが解放されると地震が起きる。プレートテクトニクスで局地的な歪みが予想できれば、将来起きる地震のリスクを評価できて大規模災害を未然に防ぐことに役立てることができるかもしれない。

 

このメカニズムでは断層の重なり合った岩盤が摩擦で歪みを支えきれなくなった時に地震が発生する。そこで衛星データを用いて衛星測量データで地表の歪みを計測して2Dマップを作ることによって、歪み分布を知ることが行われてきた。歪みの分布にはナビゲーション衛星(GNSS)や最近の干渉SAR(InSAR)が用いられた。前者はナビゲーション電波(GPS)で地球上の正確な位置情報を得るもので後者はマイクロ波レーダーを用いた測量衛星である。他に太陽光を熱源として地表で反射される赤外線を使って得られる3D地形データも用いる。

 

 

Credit: Nature Comm.

 

上図(a)にInSAR法で計測された東トルコの地震間地殻変動(歪み速度)プロファイルを示してある。欧州宇宙局のENVISAT衛星で得られた地表の上下方向への変動を5分割したマップで表示してある。(b)はNAF断層のずれ速度を示す。(c)はALOS-1衛星によるカリフォルニア州の有名なサンアンドレア断層地殻の地殻変動(歪み速度)プロファイルで、北側、南側2カ所での予想される断面のずれ速度を(d)、(e)に示した。SAF、SJF、ELFはそれぞれSan Andrea Fault、San Jacinto、Elsinore Faultの3断層を意味する。

 

サンアンドレア断層の歪み速度には大きなギャップが観測され歪みが大きいことがわかる。このような歪み速度プロファイルは1997年のチベット地震、1999年のトルコ地震、2002年のアラスカ地震、2004年のカリフォルニア地震などの過去の地震がいずれも歪み解放メカニズムによることを示している。

 

このように衛星データを解析して地表の歪みプロファイルから蓄積された歪みで将来起きる地震リスクを評価することができるようになった。このことは地震のメカニズムの中で歪みエネルギーによるものについては、定量的リスク評価が可能になったことを意味している。明らかに地震学は衛星データを駆使する新時代を迎えた。今後10年でプレートテクトニクスの動的過程の理論も進み、地震発生の予知へ繋がる時間依存の理解が期待されている。