高機能ヒドロゲルガラス繊維

21.03.2017

Photo: sciencealert

 

 ナノ科学で(機械的強度など)材料の性質材料の性質を改良することができる。北大の研究グループは、ヒドロゲル(注1)にイオン性の結合を取り込むことによりそれを織り込んだ繊維の機械強度を改良する技術を開発した。

 

(注1)高分子がネットワークを形成し液体を含んだ高分子ゲルのうち水分子を含むもの。一般に架橋された高分子ゲルの不均一性のために、外部からの張力 が最も短い高分子鎖に集中し破断することで強度が弱まる。網目を組み合わせたりイオン結合を持ち込むことで機械的強度の改善が試みられている。

 

 

ヒドロゲルはすでに人工皮膚として外傷の治療や、ロボットの皮膚に広く使われている高分子材料である。しかしこれまではヒドロゲル単体では機械的強度に問題があった。北大グループはガラス繊維にヒドロゲルを埋め込んだFRSCによりこの問題を解決した(Advanced Functional Materials 13 Jan. 2017)。

 

北大グループが開発したのはヒドロゲルを取り込んだ(Fibre-reinforced soft composite,FRSC)と呼ばれるガラス繊維。FRSCは水分子を含むガラス繊維で、繊維構造に夜柔軟性とイオン結合の強靭さを兼ね備えている。ガラス繊維に比較して約25倍、ヒドロゲル単体の100倍にもなるその機械強度は炭素鋼に匹敵するが、その強さの秘密はヒドロゲルのイオン性結合に起因する。

 

 

これより先に、東大グループはこれより先に、水中に分散したイオン性の酸化チタンナノシートに磁場を加えると、ナノシート同士が互いに向き合って配列し、ナノシート間に異方的なクーロン反発力が発生することを発見している(Nature 517 2015 5 68)。

 

これらの研究では新たにイオン結合を既存の材料に埋め込むことでミクロ構造を機能(特性)の改質をもたらしている。このようなヒドロゲルを高機能ヒドロゲルと呼ぶ。Twitterハッシュタグ#hydrogelでも明らかなように他にも広い応用分野があるヒドロゲルは材料科学者の熱い視線が集まっている。