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地球のコア(内核)の85%が鉄、10%がニッケルであるが、残りの5%がどの元素なのかは解明されていなかった。このほど東北大の研究チームが地球の内核を構成する鉄、ニッケルにつぐ第3の元素がシリコンであることを突き止めた。
東北大の研究チームは地球深部を再現した高温高圧実験によってこの元素がシリコンであると結論した。地下3,000kmのコアの調査は不可能でありシミュレーションでしか実際に元素を特定することは不可能である。Seismologyと呼ばれる地震波の測定では地球の深部を探る有効な手段であるが、組成や構造を調べることはできない。地球の中心は6378kmの深部で、内核と呼ばれる中心部は5100km以上の最深部であるる。実際に穴を掘ってサンプルを分析することになるが、ドリリングではごく表面(地殻)までしか調べることができない。
そこで地球内部の環境を人工的につくり様々な手法で状態を調べるシミュレーションに頼ることになる。高音高圧の環境をつくり出すにはダイアモンドアンビル(注1)が有効である。
実験には地球深部を再現するために高温高圧下で、様々な元素を使い、放射光(SPring-8)を用いた非弾性散乱と地震波観測を調べた。その結果、ダイアモンドアンビルのレーザー加熱(注1)により3,000K、166 GPaの環境で鉄、ニッケル、シリコンの組み合わせ(Fe0.89Si0.11とより高温ではFe3C)が、音速(地震波の伝搬)などコアの挙動を再現できることがわかった。
(注1)圧媒体中に置かれた物質をダイアモンドで挟んで高圧を発生し、赤外レーザーで加熱することによって、高温高圧を発生させる高圧装置。小型であるため今回のように放射光施設に持ち込んでX線で極端環境下で物質の状態を調べることができる。約200GPaまでの高圧、4000Cまでの高温発生が可能である。
研究グループによれば地球コアの理解が深まれば数10億年前の地球誕生の詳細な知見が得られ、コアと組成の異なる地球表面が形成された過程が解明できるとしている。コア中の軽元素の分布は原始地球を、コア形成の過程を知る上で重要な情報である。今回の研究により酸素がコアに存在しないことも明らかになった。
今回の研究では層の厚い高圧発生技術と世界最大の放射光施設(SPring-8)の組み合わせが強みを発揮した。SPring-8の他の施設でも放射光施設は極端条件の物質科学に力を入れており、専用のビームラインを有する施設が多い。SPring-8では東工大研究グループが2010年に初めて地球中心部の高圧実験に成功している。地球内部コアの鉄が六方最密充填構造(hcp)であることも東工大グループが明らかにしており、今回の研究にもその知見が使われている。
Credit: Tohoku University