北朝鮮核ミサイル進展で新たな脅威

22.03.2017

Source: businessinsider

 

北朝鮮の軍事力は秘密のベールに包まれ、戦力の正確な評価は困難であるが、武器開発は北朝鮮の外貨獲得手段である武器輸出に欠かせない。短距離弾道ミサイルのスカッドB、C(それぞれHwasong-5、Hawasong-6)とKN-02、中距離弾道ミサイル、ノドン(Rodong)、スカッドER(Hwasong-7)、テポドン(Taepodong)、ムスダン(Musudan)と実戦配備されたミサイルは数多い。また大陸間弾道ミサイル(ICBM)のテポドン2とKN-08(ノドンC)の射程距離が事実上の発射実験を含む開発が想像以上に急ピッチに進んでいる。

 

短距離弾道ミサイルスカッドB、Cはロシアの開発になるが、後者の改良型のスカッドERは射程が700-800kmになり短距離カテゴリを逸脱するほどになった。これらの短距離弾道ミサイルの射程距離には韓国が含まれることと、移動式であり攻撃が難しいことが特徴である。日本が射程範囲内に入るノドンは実戦配備済み、中国全域とロシアの一部が射程範囲にあるテポドンは発射実験を終えた。大陸間距離弾道ミサイルとして現在開発が進められているテポドン2の射程6,700km、ノドンCの 6,000kmの範囲内には、米国東海岸とロシア、東欧、中東の大部分が含まれる。

 

エンジンの燃焼試験の成功

北朝鮮が3月19日に発表した新型ロケットエンジンの燃焼試験は大陸間距離弾道ミサイルに搭載するもので、燃焼実験の成功により発射実験が早まるものとみられている。この点を米国は警戒して自国への攻撃の抑止力として韓国に迎撃ミサイルTHAADの配備を開始した。北朝鮮のミサイル開発と並んで搭載される核兵器の小型化にも成功(注1)していることから、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルの整備は時間の問題となった。

 

(注1)米軍は2016年12月に北朝鮮が核弾頭の小型化に成功し弾道ミサイルに搭載する能力があることを認めたが、大陸間弾道ミサイル技術の要である弾頭の大気圏再突入技術は完成していないと分析した。

 

 

中距離弾道ミサイルの開発を加速

3月6日の北朝鮮の一連のミサイル発射実験はノドンあるいはムスダンとみられていたが、北朝鮮の発表では新型中距離弾道ミサイルのKN-11の改良版(北極星2号)とされる。また北朝鮮は中距離弾道ミサイルの潜水艦発射にも力を入れている。2016年8月には潜水艦からKN-11の発射実験に成功している。

 

今回の発射に使われた中距離弾道ミサイルKN-11を初段にすれば大陸間弾道ミサイル開発が短縮できて、米国本土が攻撃範囲に入る日が近い。また日本を攻撃するための中距離弾道ミサイルも事前に発射の動きが検知できる液体燃料のノドンから潜水艦、陸上移動で固体燃料のため発射地点を特定できないKN-11シリーズに重点がシフトしていることは日本のミサイル防衛構想(Ballistic Missile Defense, BMD)の変更を余儀なくする。

 

 

Source: 平成26年版防衛白書

 

 

日本のミサイル防衛(BMD)

日本のBMDは飛翔するミサイルをイージス艦発射のSN-3による高空での迎撃と破壊し損なった弾頭をパトリオットPAC-3で迎撃するもの。しかしPAC-3の迎撃率が100%とはならないしマルチ弾頭には無力に等しい。そのため高空での海上配備型迎撃能力を向上する新型迎撃システムを日米の共同開発を目指している。主な改良点は推進力に加えて探索・識別能力の向上である(下図)。

 

 

Source: 平成26年版防衛白書

 

BMD整備が武器輸出3原則に抵触することから法整備が議論されるようになったが、北朝鮮のミサイル開発の進捗が早くその脅威は高まっている。ミサイル防衛は他国への攻撃ではない。立派な自衛行動である。