プレート移動に地球内部からの熱輸送が影響

21.01.2017

Credit: VisibleEarth, NASA

 

太平洋プレートの境界は世界的な地震の多さで知られるが、プレートがマントルの対流に乗って移動しており、境界では地殻変動が顕著で、地震や火山活動が活発となる(プレートテクトニクス)。プレート境界の地震、火山活動(上図)の理解にはプレートの移動メカニズムが鍵となる。

 

これまでプレートの動きの駆動力については不明な点が多かったが、シカゴ大学研究チームの新しい研究Science Adv. 2 Dec. 23, 2016)によってマントルからの熱輸送が駆動力となっていることが明らかになり、プレートが沈み込むことによる地震発生メカニズムの理解が進むものと期待されている。

 

この研究結果は日本の研究グループ(JAMSTEC)による別の研究でも確認されており、海底山脈(海嶺)がプレート移動前の境界とする従来の説明にも疑問を投げかける。新しい見解は東太平洋海嶺はマントルからの熱輸送で形成されたとしている。

 

研究チームはマントルの動きの詳しいシミュレーションと東太平洋海嶺(下の図)の観測結果と比較することにより、地球全体の半分を占めるマントル対流の熱輸送がプレート移動に大きく影響していることを見出した。モデルと観測結果の比較によりプレート移動の50%が20TW(注1)に及ぶマントルからの熱輸送によるものであることを見出した。

 

(注1)地表から放出されている熱量は44TW(Pollack et al. (1993) Rev. Geophys. 31 267-280)で、そのうち半分がマントルからのもの。

 

Credit: Greg Bozo, Wikimedia Commons

 

この結果はプレートテクニクスの理解を深めると同時に境界で起こる地震や火山活動の解明につながるものと期待される。プレート移動の駆動力については1970年代から地表が冷却される効果かマントルから流れ込む熱によるものか、決着がついていなかった。今回の研究は後者を支持している。

 

また従来のモデルがマントル起源の熱輸送を過小評価していることも示唆しており、過去40年間にわたるマントル対流モデルは書き換えられることになる。地磁気の起源は地球深部の磁性物質(鉄)の対流によるものなので、マントルの対流モデルが精密化すれば地磁気の理解も進む。

 

 

アフリカ大陸を中心としてパンゲア大陸は3億年前に形成されたとされる。1億年前に大西洋とともにパンゲアの分裂で7大陸が形成された。大陸の移動は続いており境界では歪みエネルギーが放出される時に地震が起きる。マントルからの熱輸送の詳細な知見が得られれば、プレート境界での地震、火山活動の理解が進むものと期待される。