トランプ政権が気候変動説にレッドカード

18.03.2017

Credit: GoPro

 

2017年4月に英国で9回目となる気候変動に関する国際会議(ICCC)が予定されている。2017年は気候変動説の根拠となる地表気温データの信憑性が揺らいだ事で地球温暖化仮説のターニングポイントとなると同時に、米国新政権の環境保護政策の全面的な見直しは手痛い打撃となる年でもある。

 

メデイアと政府系研究機関の連携で急速に世界に広がった地球温暖化説は、国連のIPCC主導で強大な政治力を持つに至った。現在各国が温室効果ガス排出量規制にしのぎを削っているが、膨大な対策予算を投入しているにもかかわらず排出規制効果の実績も気温への影響も目標を遥かに下回る。排出規制が効果を上げるためには過半数を閉める北米と中国の排出に歯止めがかからなければならない。しかし両国とも排出規制がエネルギー産業を直撃するため経済的代償が大きい。

 

 

地球温暖化の仮説は①地球が温暖化している、②温室ガス効果が温暖化の原因である、③温暖化を止めなければ2060年までに2度以上の気温上昇が起きる、温暖化を止めるには温室ガス排出量を減らせば良い、という3段論法であるが、①、②を巡って賛否両論が巻き起こり、その検証はなされていない。これまでの地表気温のデータに任意性があり、NOAAのデータ隠蔽疑惑で温暖化の根拠もゆらいでいる。最近の地球観測衛星や気球観測など新しいデータが蓄積されるに従って、ドグマにほころびが目立つようになった。それでもNASA を含む政府機関や学会執行部は主張を変えない。

 

このほどアル・ゴアやドイツのメルケル首相など肯定派の反論を退け、トランプ政権はオバマ政権の温暖化対策を後退させる方針を打ち出した。温暖化対策は環境保護政策には膨大な国税がつぎ込まれる一方で、企業は排出規制や排出権で負担が大きく二重に経済活動に悪影響を及ぼす。それでも排出ガス総量や(仮に地球気温に影響があるとしても)実質的に削減努力が気温に反映されていないとすれば(注1)、経済政策を最重要課題とする新政権が予算削減を含む環境対策にメスを入れたのも頷ける。

 

(注1)地球の気温を決める熱収支は複雑で、太陽の熱エネルギーの経路に地球環境(海水からの温室効果ガス放出や光合成による減少と再放出(燃焼))に産業活動が加わって、地球(気候)モデルは相関を持つ多変数の複雑系となる。

 

 

温暖化に都合の悪い事実

下図は陸地と海洋を含めた地球気温のデータセット(HadCRUT4)(注2)のプロットである。

 

 

Source: ryoc.us

 

(注2)英国気象庁のハドレーセンターが公開する全地球の海洋の表面水温とイースト・アングリア大学気候研究ユニット(CRU)の上空気温の観測データセット。

 

1980年初頭から始まる温暖化傾向は気候モデルでの2060年の予測が2度を超えるとされた。これが「何もしなければ恐ろしい結末を迎える」として恐怖感を煽る地球温暖化説がドグマ化した根拠となっていた。しかし最近の結果では1983年から1997年の上昇から予測される上昇は100年間で1.44Cとなる。しかし1998年のエルニーニョ・ラニーナ現象(海流)の影響で気温上層はピークを迎えた後はほぼ一定(100年で-0.08Cという減少傾向)となった。

 

 

 

地球温暖化の仮説は実測の気温が温室効果ガスの濃度との相関が未検証で気候モデルのシミュレーションに基づく2060年平均気温が2度越えとした議論には精度が不足している。温室効果ガスの温暖化への影響についてはここでは詳しく触れないが、少なくともIPCCの予測(1.8度)は過大評価であることが確実となった現在、無駄な予算を意味のない規制につぎこむ政策の転換は妥当と言えるのではないか。

 

 

見直される環境政策

新年度予算で影響を受ける環境政策は以下の9項目である。

 

・ クリーンパワープラン(2015年8月施行):発電施設からの温室ガス排出規制。石炭火力ではクリーンコールなど排出量の低減が課題となる。

 

米国の水資源規則(2015年8月):1972年のClean Water Actに従った米国水資源の保護と環境基準。シェールオイル・ガスの掘削企業が緩和を求めている。

 

・ 新たな施設に対するメタン・ルール(2016年5月):メタンガス排出量をEPA(環境保護局)に届ける制度。温室効果ガスの一つであるメタンガスの排出規制を目指した第一歩。

 

・ 既存施設に対するメタン・ルール(策定中):既存の施設に対してメタンガス排出規制を目指した法的整備が、現在検討されている。E`Aは排出ガス実態を把握していなかったため、情報提供を義務付けるための措置。

 

・ ブローアウト(圧力破壊)防止法(2016年4月):2010年にMエキシコワンで11名の死者を出した洋上掘削基地の火災事故を契機に、原油掘削事故を防止するための法律。異常時には油田を閉鎖するなどの厳しい規制を含む。

 

・ キジオライチョウ保護法(2015年9月):北米に生息するセージを食するライチョウの一種。絶滅の恐れがある。特定地域でのオイル、ガスの販売に規制がかかる。

 

・ 連邦管理区域のフラッキング(2015年3月):環境保護のためにフラッキングに用いる化学物質の公開が義務付けられる。掘削企業にとっては企業秘密の公開になるので、規制に反対している。

 

石炭灰(石炭燃焼残渣)規制(2015年4月):石炭を燃焼させた灰に含まれる有害物質の規制と再利用の促進を目指す。

 

・ 結晶シリカ作業者安全規則(2016年3月):フラッキング作業の従事者の健康被害を防止する規則。シリカ粉塵下での労働時間規制などシェールオイル・ガス企業の労働安全基準。

 

 

これまで地球温暖化の対策として多くの関連法案が成立し、エネルギー企業の負担となっていた。米国新政権は企業負担が経済活動の妨げになると判断した。また行き過ぎた環境保護政策は官僚の腐敗につながることも各国共通の問題である。しかし規制を緩和しすぎれば環境悪化や健康被害が助長される。長期的に見れば見直しや再立法などで、様子を見ながら規制を調整する臨機応変な規制が要求されるだろう。

 

利益相反の大きいエネルギー産業を相手にするにはトランプ政権のような豪腕さが必要なのかもしれない。国税を使うなら環境に優しいクリーンコールなどエネルギー技術開発に投資する方が気が利いている。気候変動で利益を得る利益構造を取り除くのはこれからも時間がかかるであろうが、ひとまず100年で2度以上気温が上昇する心配は必要なさそうだ。