オーロビルダム決壊の恐れ~荒廃する米国のインフラ

17.02.2017

Photo: hindustantimes

 

カリフォリニア州のオーロビルダムは米国の黄金期1963年に着工されたカリフォルニア州利水計画の中核となる巨大土木工事プロジェクトで、ロッキー山脈の降雪の雪解け水が流れ込むフェザー川の水の流れを変えて貯水する。膨大な土砂を3本の列車で運び込み米国式の機械化で200mを超える高さに盛り土をした巨大なオーロビルダムは1967年に完成した。

 

ダムの主な仕様は、米国最大の高さ(235メートル)のダム、長さ2109メートル、人口池の貯水量、43億m3、州内では2番目の貯水量となる。機械化を多用した最新の工法で建設されたオーロビルダムはアポロ計画同様、最盛期の米国が威信をかけて行った土木事業であったが、川の氾濫を防ぐために当初より早く貯水が開始されたり、工期にこだわったこともあり強度不足の場所も早くから指摘されていた。

 

オーロビルダムはサンフランシスコの西240キロ、サクラメントから北105キロ地点にあり、決壊すればサクラメントが洪水となるとして、12日に188,000人の避難勧告が出された。2005年には地域や環境保護団体は、州政府にオーロビルダムの構造的問題を訴え、構造強化を求めたが予算化されなかった。排水路の一部に穴があき水位が高まる中で決壊に繋がりかねない危険性が指摘されている。

 

Source: express.co.uk

 

予算がつかないインフラが生んだ悲劇 

現時点で決壊の報告はないが予想される降雨で貯水量が増大すれば危険が高まる。最悪の場合、フェザー川にダムからの水が流れ込み、サクラメント川と支流しているサクラメント川に面している地域が水没する可能性がある。避難勧告の発令30分後、店は全て休業となり、市民は車で避難したため、ガソリンスタンドは混雑し、盗難や略奪も起きて緊張感に包まれた。避難区域まで車の渋滞が続き移動に5時間を要している。今後の展開は降雨量にかかっっており予断を許さない

 

2005年にはダム排水路増強計画が提案されていた。しかし当時のブラウン州知事は計画に予算をつけなかったことが今回の排水路の欠損事故につながったとして批判が高まっている。かつて日本でも「モノよりヒトへ」として公共工事の予算化に反対する動きがあったが、まさにモノに予算をつけなかったことでヒトが被害を被っていることになる。

 

 

相次ぐインフラ事故

トランプ大統領が指摘しているように米国では建設当時の最新の土木工事で60年代に完成したインフラも半世紀を経て、連邦政府と地域行政の財政難で更新ができないまま、事故が多発している。2010年にはカリフォルニア州、サンフランシスコ南部でガスパイプラインが老朽化により爆発事故を起こし8名が死亡、50戸以上の家が破壊された。全米に敷設された250万マイルに及ぶパイプラインもオーロビルダムと同じ時代に建設されたもので半世紀前の施設であった。

 

2013年にはワシントン州で橋が崩落したが、米国道路網も50年代に整備されたため老朽化が進んでいるが、連邦政府のガソリン税に依存する道路信託基金では再整備の余裕はない。2015年1月にワシントン市の地下鉄は老朽化による漏電火災で車内に煙が充満する事故を起こした。

 

 

トランプ大統領が選挙戦で訴えた国内インフラ整備に資金をつぎ込む政策は、交通網、ガスパイプライン、ダムなど公共施設の老朽化に危険を感じていた国民に支持されたことは自然な流れと言える。