エネルギー革命を目指すテスラの蓄電システム

01.02.2017

Photo: businessinsider

 

テスラEVは破竹の勢いでEV旋風を引き起こし、パナソニックと共同出資でテスラEV50万台分の生産量を有するLiイオンバッテリー工場(ギガファクトリー)が建設中である。テスラ社はEVの要となるバッテリーの利用で再生可能エネルギーを電力網に組み込むためテスラ・エナジー社を創設し蓄電システム事業に参入した。

 

テスラ・エナジー社のラインアップは、家庭向けにコンパクトな蓄電システムパワーウオール(注1)と大型蓄電システム、パワーパックである。後者は拡張可能で大規模な工場や発電所、公共施設の一部電力供給を置き換える。つまり不安定な再生可能エネルギーをベース電源化するためのもので、将来的に電力網に組み込むことで再生可能エネルギーの本格的な普及につながる。

 

(注1)出力7kWhと10kWhで、それぞれ連続電力2kW、ピーク電力3.3kWで電力を蓄電する。太陽光パネルと接続して、夜間に供給して電力負荷を調整する。

ネヴァダ州に建設が進むギガファクトリーのLiイオンバッテリー生産量はテスラEVの需要を越えるため、テスラEVでは過剰生産となるLiイオンバッテリー供給量を背景に蓄電池システム市場に参入したとみられているが、ギガファクトリーはバッテリー価格を押し下げてパワーパックの本格的な普及に一役買っている。

 

 

南カリフォルニア州に建設された2箇所の大型蓄電池システム(注2)はいずれも最大の蓄電容量システムである。これらのパワーパックシステムが急ピッチで工事が進められた背景には、2016年2月にガス漏れが止められるまで数千トンのメタンガスが空気中に放出されたロサンゼルス近郊のポーターランチの天然ガス漏れ事故がある。火力発電リスクを懸念したカリフォルニア州は電力消費が集中する南カリフォルニアの冬季電力不足を解消するために、大型蓄電システムの導入することになった。

 

(注2)Southern California Edison’s Mira Loma substation、Kauai Island Utility Cooerativeの蓄電システムの工事は24時間体制で行われ、大型蓄電システムが94日で完成することを実証した。前者では改良された1基あたり210kWhのパワーパック2が400台以上で並列に接続され、80MWhの蓄電容量を有している

 

 

Source: zmescience

 

これまで蓄電システムの市場規模は小さく、事業もここ10年で立ち上がったものである。本格的な蓄電システムの普及にはバッテリーの価格がネックで、電力需要の大きい時間帯に電力を供給するのには火力発電(天然ガス)に対する比較優位性がなかった。

 

しかしLiイオンバッテリーの価格がEV普及に伴い急速に下落、2014年の半分にまで下がるとカリフォルニア州は2020年までに1.32GWの蓄電システムを整備することを決めた。一方、テスラ2020年までに15GWhのバッテリー生産を予定している。現在の蓄電システムの電力コストはkWhあたり500ドルだが、採算性を得るにはその1/2程度となる必要があるが、ギガファクトリーの稼働により採算性は確保できるとみられる。

 

 

蓄電システムがグリッドに取り込まれると再生可能エネルギー(太陽光、風力)がベース電源化される。そのため現在の火力発電事業は役目を終える。Liイオンバッテリーの生産量がEV普及に伴って増大し、蓄電池システムの普及につながるシナリオはここ10年で現実味が出てきた。またLiイオンバッテリーの研究開発がさらに進めばエネルギー密度も高性能化し、一方では燃料電池サーバーも水素供給インフラの整備で普及が進むものと考えられる。バッテリーと水素でのエネルギー貯蔵はエネルギー革命をもたらすと期待される。

 

ちろん蓄電システムの研究開発は日本でも精力的に行われているが、結局バッテリー技術と価格がボトルネックである。日本はLiイオンバッテリー技術を持ちながら事業のスケールアップができなかった一方で、テスラ社がバッテリー生産のスケールアップで再生可能エネルギーの電力網への本格的な取り込みというエネルギー革命に米国で火がついたのは皮肉である。