難民家族容認の是非を巡って困惑するドイツ

07.04.2017

Photo: napocanews

 

 9月に連邦議会選挙を迎えるドイツで、移民政策への非難が一段と高まる可能性がある。これまで、家族の大量流入を防ぐ目的で、ドイツ滞在を認められ、生活支援を受けている移民は原則2年間、家族の呼び寄せを認めてこなかったが、メルケル政権は、2015年と2016年にドイツが受け入れたシリアからの難民431,376人のうち267,500人に家族の呼び寄せを認めた。

 

ドイツ国民の危惧

 ドイツ国民が警戒する背景には、中東からの難民や移民が持つ大家族にある。ドイツの2016年の合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数の推計値)が1.4に対して、難民が多いシリアでは2.98、イラクでは4.58、リビアでは2.49と一家族の子供の数が多いことがある。加えて、多くのイスラム国では複婚が許されていること、近親者を含む大家族であることから、家族の大量流入が予想される。下に複婚が合法である国と地域を黒で示した。赤い色は禁止、紫は違法だが刑罰が無い国。家族の呼び寄せで難民の数は現在の数倍に達するとなる。

 

 

4人の奥さんと子供23人のシリア難民

 2015年に家族と共にシリアから非難したシリア男性 “Ghazia A.”は、4人の奥さんと子供23人を連れて、トルコ経由からドイツに移住した。ドイツでは複婚が禁止されているが、4人の奥さんのうち1人を「正式な配偶者」とし、ドイツ政府はあとの3人の奥さんを「パートナー」と認定した。3人の奥さんと子供の各家族は別々に近距離の場所で暮らしている。イスラム教では、男性は財政的に可能であれば、女性4人まで結婚が許されている。

 

 このシリア人家族には年間360,000ユーロ(約4,248万円)が支援として支給されていると推定される。ドイツ政府は、“Ghazia A.”の家族の事例は例外としているが、移民に支給されている手厚い社会福祉給付や移民政策への国民の非難は日増しに高まっている。

 

 

 “Ghazia A.”は働く意志はあるとしながら、現実的には4家族の世話で働く時間がないと説明している。“Ghazia A.”が例外であるかは、今後家族の呼び寄せで明らかとなるが、ドイツ財政と社会への影響は避けられない。家族を呼び寄せる移民たちでドイツの人口増加と特殊出生率が上がる一方で、国民の不満が増大し社会の不安定化に繋がる。ドイツはそれでも家族を含む難民受け入れを容認するのかどうかの岐路に立たされている。連邦議会選挙の結果に国民の意思が表明される。