米軍のポーランド派兵で緊張が高まるロシア国境

14.01.2017

Photo: army.mil

 

政権移譲を数日後に控えたオバマ大統領は1月12日、NATO演習の一環として、ロシア国境に近いポーランド領地に派兵した。プーチン大統領はこれに鋭く反撥し、この派兵はロシア国境防衛を強化するものでロシアの利益と安全保証を損なう懸念を表明した。

 

ロシアは欧州以外の国が東欧国境付近に派兵することは戦争の緊張を高めロシアの安全保障を脅かす行為だと主張している。今回の軍事演習(Atlantic Resolve)は一連のNATOの対ロシア演習の最後のもので、冷戦集結以来では最大の演習となる。

 

米国が政権交代後も引き続きNATOの軍事的中心となることを希望する欧州諸国はトランプ次期大統領のロシアとの対話政策に反対しており、ポーランド国境を超えてのロシアの侵略に警戒感を強める。

 

一方、米国防総省はロシアの越境があれば集団自衛権の侵害と解釈して米国はNATOに協力して行動するとしている。今回の演習は9カ月で終了するが、オバマ大統領はバルテイック海に近い地域への大規模な派兵をNATOと米軍の合意している。

 

 

今回の派兵は1,000両の貨車を38本の列車でドイツ領からポーランド国内へ運び込む大規模なものである。機甲旅団は80台の戦車を含む1,300台の戦闘車両からなり4,000名の将兵がポーランドとリスアニア(下の地図参照)のロシア国境沿いに展開する。なお欧州に駐留する米軍は70,000人であるが、トランプ政権が日本、韓国、NATOに駐留経費負担引き上げを要求している。NATOの事務総長ストルテンベルグ氏は加盟国に対し2016年11月25日に米軍駐留費負担の増額を呼びかけている。

 

 

Source: yourchildlearns 

 

最近のロシアとの対立はバルト海沿岸に集中している。今回のポーランド派兵はNATOにとっては、国境警備の増強でロシア侵略の抑止力となることを狙ったものだが、同時に米国とNATOの結束を強めたとえ駐留経費の負担が増えてもロシアとの対立姿勢を崩さない姿勢を示すものでもある。しかし国境沿いの兵力増強はロシアを刺激し一触即発の危機を高めている。トランプ次期大統領の就任式を目前に東欧のロシア国境には緊張が高まった。