朝鮮半島周辺の米軍の展開~最新情報

13.04.2017

Photo: bbc

 

着々進む米軍の展開

 核実験や核爆発で発生した放射性粒子を大気から検出する、米空軍の軍用機WC-135(コンスタント・フェニックス)が沖縄の嘉手納米空軍基地に飛来したことが7日に確認されている。2006年の北朝鮮の核実験以来、核実験の兆候ある度、嘉手米空軍基地へと飛来している。

 

 米軍のミサイル防衛システムに使用されている高性能衛星通信機能(早期警戒防衛)の重要拠点となっている、米豪共同運営のパイン・ギャップ基地(オーストラリア)が「待機状態」に置かれた。米軍は北朝鮮に向けていつでもミサイル攻撃を行える状態にある。

 

カール・ビンソン打撃群の行方

CVN-70カール・ビンソン原子力空母を中心とする打撃群はシンガポールを出航して4月8日に東シナ海に到着した(上の写真)。同艦のホームページにはしかし現在地に関する一切の情報がない。西太平洋での展開は期間限定だが、状況次第では延長もあるとみられる。

 

米韓軍事演習

 米韓が3月7日から4 月30日まで開催している米韓合同軍事演習「フォール・イーグル」と「キー・リゾルブ」は、昨年に続き史上最大規模の軍力の演習となった。米韓軍の約307,000兵、原子力空母、イージス艦、原子力潜水艦、ステレス戦闘機F-35Bが参加している。今回は初めて米軍特殊部隊の海軍のシールズチーム6、陸軍のレンジャー、デルタフォース、グリーンベレーが参加している。北朝鮮に特殊部隊を送り込んで金正恩委員長や政権幹部の殺害を含む、北朝鮮の攻撃力を失わせる作戦の演習が行われていると思われる。

 

 

THAAD ミサイル配備が進展

2017年3月6日、在韓米軍鳥山空軍基地にTHAADミサイル(注1)が運び込まれた。韓国国会は大統領不在のままTHAADシステムの韓国内への配備に反対する中国の報復措置を停止するよう中国に求める決議が可決された。

 

4月11日の最新情報(UPI)では韓国政府は米軍に協力しTHAAD展開に必要な整地用工事車両を含む機材を(実戦配備のため)移動したことで、中国の反撥が強まった。機材の移動は住民の反対で中断されていた。国内でもTHAAD配備の反対集会で騒然としている。米軍のTHAAD配備の環境アセスメントが始まっており、実戦配備が近いことを示唆している。韓国内ではTHAAD打ち上げ支援の軍用ヘリが一足早く運用開始しているが、実戦配備には高度な誘導システムの設置が不可欠であり、精密機材の同時展開が鍵となる。

 

(注1)THAADはPatriotの後継で弾道ミサイルが大気圏に再突入して攻撃の最終段階に入るときに迎撃、破壊するミサイルシステムでTerminal High Altitude Area Defense missileの略。韓国内に配備するTHAADは韓国内への短距離ミサイル防衛ではなく、日本の米軍基地とグアムを防衛するためとして、ケリー全国務長官の説得に韓国政府は応じなかった経緯がある。北朝鮮が韓国を攻撃するには近距離弾道ミサイルと砲兵隊を使うので、長距離弾道ミサイルは使用されない。米軍の本音は中距離弾道ミサイルによる米軍基地を守ることにあると考えられる。THAADの迎撃の成否は目標を早期に発見して追尾することにかかっている。そのため韓国内を標的としない中距離弾道ミサイルでもできる限り前線で補足することが望ましいからである。

 

 

中国の対応

4月12日 香港の非政府組織、人権民主化情報センターの情報によると、中国政府は北朝鮮情勢に備えて、中国の5つの省級軍区(山東省、浙江省、雲南省、四川省、チベット、成都)において軍備レベルを高めた。弟9機甲旅団の47部隊の約25,000兵に北朝鮮国境への配備への準備を行っている。

 

4月10日 北朝鮮での緊急事態に備えて、中韓国境地域に重武装機械化部隊と迅速対応部隊の約15万兵を移動配置した。

 

 

北朝鮮の動向

4月12日 金正恩はピョンヤン市民60万人に市街からの非難命令を出した。米国による核攻撃に備える対応で、ピョンヤン全市民の25%が非難できる核シェルターが不足していることからの非難命令である。

 

4月9日 北朝鮮による北朝鮮外部の工作員指令用の乱数放送があったことが判明された。「21号探査隊員のための遠隔教育大学数字復習課題を知らせる」と予告した後、5桁の数字、合計70セットを2回読み上げる方法で放送された。2000年に開催された南北首脳会議以来中断されていた乱数放送は、16年ぶり2016年3月に再開、今回は2度目となる。