ロシアの米国大統領選への関与疑惑の真相 Part 1

19.12.2016

Credit: abcNews

 

 ロシアがハッキングとサイバー攻撃を仕掛けて、米大統領選でクリントン氏に大打撃を与えトランプ氏を当選させたと結論付けた米中央情報局(CIA)の報道が大きな波紋を呼んでいる。CIAの情報だけでなく、米主要メディアの報道に対して多くの疑問がある。

 

 

不可解なハッキング報道

 ワシントン・ポスト紙ニューヨーク・タイムズ紙は12月9日に、ロシア政府の複数の関係者によると、大統領選挙期間中に民主党全国委員会(DNC)の計33,000件のメールとクリントン陣営の選挙対策責任者であったジョン・ポデスタのメールをハッキングした後、メール公表を目的にウィキリークスに渡したことを報じた。CIAの分析結果では、ロシアはトランプ氏が有利になることで、当選できるように情報操作を行ったと結論付けた。

 

 しかし、このことは、CIA内部の複数の匿名情報者が両紙に流した情報を主体に書かれた記事で、公式にCIAを含む全ての情報機関(インテリジェンス・コミュニティー)が達した結論ではないこと、決定的証拠が提示されていないことに注目を置く必要がある。

 

 

ロシアのハッキングではなく内部リークと主張する前英大使

 英国のクレイグ・マレー前駐ウズベキスタン大使は、14日にクリントン選挙陣営とDNCのメール情報に法的アクセス権を持つ「不満分子」内部告発者グループから情報を受け取り、ウィキリークスに直接渡したことを暴露した。

 

 メレー氏は9月に渡米、米ワシントンD.C.にあるアメリカン大学に隣接している林の一角で、告発者の代理人から機密情報を手渡されたと述べている。メレー氏によれば、

 

「情報は内部リークであり、ロシアによるハッキングではない。」

「告発者たちは、クリントン財団の汚職や民主党候補者選でバーニー・サンダースが勝利できないように情報操作、選挙工作を行ったことに不満を持った民主党内部の複数の人物たちである」

 

 

ウィキリークスもロシア関与を否定 

 ウィキリークスのDNCとポデスタのメールを公表して以来、ジュリアン・アサンジ氏は情報源がロシアではないことを主張してきた。15日には米ラジオ番組Sean Hannityに出演、ウィキリークスは情報源を保護する厳しい規定があることを述べたうえで、今回の情報は特定の国家、ロシアによるハッキングで入手した情報ではないこと、情報にアクセスできる内部告発者によるリークであることを指摘した。またCIAのロシアによるハッキングとサイバー攻撃説を否定し、根拠がないトランプ氏に対する大統領任命を妨害する工作であると警告した。