キャッシュレス社会を目指すインド

20.04.2017

Photo: thenational.ae

 

 インドのモディ首相が突然、高額紙幣を廃止してから5カ月。銀行の現金不足の状態は続いており、地域によっては90%の銀行ATMが現金不足である。混乱か一向に収まらない状況のなか、モディ首相はまたもや突然75都市を「キャッシュ都市」に指定した。

 

 指定された75のキャシュレス都市のうち、56都市はインド北西部の工業生産が最も盛んなグジャラート州、その他11州に渡り19都市となった。指定都市の決定は、今後電子社会のインフラ整備と管理に大きな役割を果たすとされる、英プライスウォーターハウス・クーパースの第3者評価に基づいている。

 

 

キャッシュレス化の背景

 インドが高額紙幣を廃止した理由には、マネーロンダリングの撲滅、汚職の撲滅、脱税対策、偽札対策、資産把握があげられる。しかし、現金社会であるインドでは、約90%の取引は現金であるため、流通している86%の紙幣の廃止で混乱が起きた。廃止された高額紙幣の代わりとなる新紙幣が必要量発行されていない上、新紙幣に対応できる銀行ATMが不足していることで社会混乱が続いている。

 

 現金中心の社会でインド政府が特に問題視してきたのが、ブラックマネー(無申告の所得と資産)とそれを使っての取引。ブラックマネーを撲滅することで、税収が増え、実体経済の一部として組み込むことができるようになるからである。

 

 

 高額紙幣の廃止から始まり、限定されたキャシュレス都市の「実験」はインドが現金廃止に向けてインドを象徴している。モディ首相が描く21世紀インド、「キャシュレス国家」に世界の金融関係者、特に各国中央銀行は注目しているにちがいない。キャッシュレス化で貨幣ビッグデータを中央銀行が把握し追跡できるようになることで、監視社会への動きが加速される。またキャッシュレス関連ビジネスとビッグデータ管理会社の利権が生まれることは避けられない。