酷寒でも高性能なLiイオンバッテリー

06.12.2017

Photo: quora

 

現時点ではエネルギー密度において他を寄せ付けないLiイオンバッテリーだが、その能力を発揮するには温度管理が不可欠である。寒冷地でバッテリーの温度が下がると充電中の最大電流が制限されエネルギー効率も低下する。寒冷地では従ってバッテリーの温度管理にヒーター電力を使用するため、スタンバイ時にも電力消費が無視できない。

 

 

氷点下の気温ではLiイオンバッテリーの蓄電量が低下する。これは寒冷地のEVにとっては致命的な問題となる。中国の復旦大学の研究者グループは寒冷地に強い前リチウム化炭素陰極とLiイオンを含む陽極を開発した(Liu et al., Angewandte online Nov. 30, 2017)。新たに改良した前リチウム化炭素陰極の採用で低温でもインターカレーションが妨げられない特徴を持つ。

 

 

Credit: Angewandte

 

充放電サイクルでLiイオンは陽極から陰極へ移動するが、陰極材料は一般に黒鉛が用いられる。このLiイオンが取り込まれる陰極材料として、前リチウム化炭素陰極極が優れている。しかし前リチウム化プロセスが純Li陽極を必要とするため、複雑でコスト高である問題があった。そこで研究グループはLi電極の代わりにLiイオンを多く含むバナジウム燐酸化合物を易黒鉛化と通常の充放電に用いることで、この問題を解決した。

 

この新型Liイオンバッテリーは寒冷地でもエネルギー密度を保てる他、超寿命であることが特徴で、これまでの弱点とであった寒冷地でのLiイオンバッテリー特製劣化がない。従来型のLiイオンバッテリーでは-40度Cの環境で10%の容量しか保持できなかったが、新型では2/3の容量を保持できルため実用上酷寒の環境でEV運転に支障がなくなった。

 

 寒冷地でのLiイオンバテリーの問題については様々なレポートがある。以下はその一つでノルウエイでテスラEVについてのものでテスラEVの特権であるスーパーチャージイングが寒冷地でどうなるかがわかる。世界でもっともスーパーチャージャーネットワークが充実しているノルウエイだが酷寒の冬にはメリットが生かせないようだ。