新しい蛋白質が誕生するメカニズム

24.10.2017

CREDIT: MATTHEW CORDES, USING UCSF CHIMERA MOLECULAR GRAPHICS PACKAGE

 

アリゾナ大学の研究グループは酵母蛋白質が、転写因子であるScratch蛋白質から誕生し、のちにフォールデイングして3次元構造に変化することを見出した(Bungard et al., Structure 2017)。この新しい蛋白質Bsc4(上図)は従来知られている蛋白質のような複雑な3次元構造にフォールデイングされる以前の誕生直後の状態にあると考えている。

 

Scratch蛋白質からの発生メカニズム

蛋白質へ翻訳されず染色体あるいはゲノム上の機能が特定されていないようなDNA領域(ジャンクDNA)から遺伝子が形成され翻訳されて新しい蛋白質が形成されることが最近明らかになっている。この研究によってScratch蛋白質から発生した蛋白質がコンパクトな3次元構造にフォールデイングできることが実証された。

 

研究グループはジャンクDNAから遺伝子が形成されて翻訳された蛋白質を初めて研究している。全く新しい遺伝子をつくることよりも。既存の遺伝子を変化させることの方が容易であることから、新しい遺伝子も既存の遺伝子の変化形と考えられてきたが、研究グループは全く新しい遺伝子が誕生することもあるとしている。

 

ジャンクDNAから新しい蛋白質が誕生することはあっても、その詳細は未知の領域である。別の研究では、発生期のマウス大脳において、転写因子のScratch蛋白質が神経幹細胞から産生された直後のニューロンに発現していることを確認している。

 

新蛋白Bsc4を求めて

研究グループは酵母蛋白質がジャンクDNAから発生したと考えており、遺伝子BSC4から翻訳された蛋白質Bsc4DNA修復機能を持つことに注目している。現在、研究グループはより詳細な情を得るために大腸菌で、Bsc4を大量に培養する努力を重ねている。DNAの配列を認識・結合し、遺伝子の発現を制御するという基本的機能を持つ転写因子は新しい蛋白質誕生や脳形成に重要な役割を持つことが認識され、この分野は生命発生の鍵を握ると同時に疾患のメカニズムとも強く関わっているため、世界中で精力的な研究が行われている。