ミトコンドリアへの蛋白質分子挿入メカニズム

30.01.2018

Credit: optimallivingdynamics

 

フライブルグ大学の研究チームがβバレル蛋白質がミトコンドリアの細胞膜に取り込まれるメカニズム解明に成功した。蛋白質研究の主要課題のひとつであった蛋白質分子のミトコンドリアへの輸送現象の理解が進むものと期待されている(Hohr et al., Science 359 eaah6834, 2018)。

 

細胞にエネルギーを輸送するミトコンドリアは細胞質ゾルから運ばれた1000個に及ぶ蛋白質分子で構成されるため、外側の細胞膜は蛋白質を取り込むバレル構造の蛋白質(βバレル蛋白質)(注1)を有している。

 

(注1)βバレルは蛋白質の3次構造のひとつでβシートがねじれてコイル状になり両端が水素結合で結合した構造になっている。細胞膜を貫通する蛋白質に見られる。

 

ミトコンドリアはATPから細胞エネルギーを得る代謝に中心的な役割を果たしている。ATPはバレル構造を通してミトコンドリアから代謝作用を行う細胞質ゾルに移送される。フライベルグ大学の研究チームは30年前にβバレル蛋白質の結晶構造解析を行なって以来、細胞膜に輸送チャネルを持つβバレル蛋白質が挿入されるメカニズムを研究してきた。

 

その後、ミトコンドリアの外側の細胞膜にバレル蛋白質を挿入する機能をもつSam50(注2)を中心にもつSAMと呼ばれる蛋白質が発見された。研究チームはSam50の側面にある開口部にβバレル蛋白質が少しづつねじ込まれるメカニズムによって蛋白質が膜内に取り込まれることを見出した。

 

(注2)ミトコンドリア外膜トランスロケータ(輸送)蛋白質

 

 

Credit: Science

 

ミトコンドリアと光合成葉緑体は同一の細菌から派生したものであるため、細胞の代謝活動の理解が進むばかりでなく、葉緑素形成のメカニズムの解明につながると期待されている。