アゾベンゼンベースの光熱電池が高エネルギー密度達成

21.12.2017

Photo: azocleantech

 

光熱電池(Photo-thermal battery)や熱電池(Thermal battery)は再生可能エネルギー貯蔵が課題となった今日、様々な方式の電池が開発されている。高分子電解質を用いた光熱電池は高エネルギー密度が特徴でエネルギー貯蔵に有望と見なされている。光熱電池は太陽光で分子を励起して、エネルギーを準安定相として保存しておいて、使うときに基底状態に戻して熱エネルギーを回収する。

 

マサチューセッツ・アマースト大学の研究グループはアゾベンゼンをベースとした高分子電解質を用いた光熱電池でエネルギー密度~510J/g(最大698J/g)を達成した。研究グループはエネルギー密度に電解質溶液前処理と高分子薄膜の微視的構造が重要であることを明らかにした(Pyo et al., Nature Scientific Reports 7:17773, 2017)。

 

光熱電池は実用化されている電気化学蓄電池よりも高エネルギー密度を持つ。アゾベンゼンを電解質とすることが高性能化の鍵と考えられ、カーボンナノチューブや還元グラフェン酸化物を電極としてエネルギー密度~490J/gが報告されている。

 

研究グループはポリメタクリレート(PMA)とアゾベンゼンをアゾ化したAzoPMAを電解質として用いることで、エネルギー密度が最大で~698J/g、平均で~510J/gとなる高性能光熱電池を開発した。

 

有機光熱電池では光励起で準安定異性体となり、このエネルギー的に高い異性体が基底状態に戻る際に熱エネルギーを放出する。異性体間の相転移では副生生物ができないので、エネルギー損失がない。原理的には800J/gとなることからアゾベンゼンを使う光熱電池は有望と考えられたが、エネルギー密度が~200J/gと低い欠点があった。

 

研究グループはAzoPMA直鎖と側鎖の位置関係によって異性体間のエネルギー障壁が大きく異なることを計算で明らかにし、プロセスを最適化してエネルギー差が大きくなる配置をとるように工夫することで、計算予測に近い性能(最大~700J/g)の高エネルギー密度を達成した。下図d-fはAzoPMA直鎖と側鎖の位置関係に依存したエネルギー差(エネルギー密度)。

 

 

Credit: Scientific Reports