日本はデファクト核兵器保有国

12.10.2017

Photo: presstv

 

 唯一の被爆国であり、核兵器保持はあり得ないとされてきた日本だが、崇高で情緒的な願いとは裏腹に、国際的には日本が原子力平和利用に隠れて、核兵器製造が可能なプルトニウムを保有する国(デファクト核保有国)とする認識が高まっている。

 

 9月21日、水爆100個を製造できる量のプルトニウム(700kg)がフランスの再処理工場から船で輸送されてきた。高浜原発4号機で使用されるる予定のMOX(ウランとプルトニウムの混合燃料)である。国外(英国とフランス)で行う原発から出る使用済み核燃料の再生のための大量のプルトニウム輸送は今回が1999年から6回目となる。

 

デファクト核兵器保有国とされる理由

 原子力平和利用の一環で、核燃料サイクルの根幹となるMOX燃料製造の目的ではあるが、北アジアにおける核兵器非拡散の観点からは国内に貯蓄されている大量のプルトニウムが、無視できない「脅威」と取られても不思議ではない。特にプルトニウム製造阻止に多大な努力が払われてきた中での北朝鮮による水爆実験を契機に、目的はどうあれ大量のプルトニウム貯蔵への関心が急速に高まっている。

 

 その理由は最も困難な核兵器製造過程(プルトニウム製造)の必要がない日本は高い技術力で、短期間(6カ月)で世界の軍事バランスを崩すほどの核兵器を製造できると考えられているからである。確かに輸送手段(ミサイル・長距離爆撃機)があれば、そのままDirty Bombとして投下、爆発させれば実質的な核爆発同等もしくはそれ以上の核物質汚染で壊滅的なダメージとなる。日本は輸送手段を持たないといっても、衛星打ち上げロケットを転用すれば弾道ミサイルは簡単に開発できるのだから疑いをかけられても仕方がない。

 

 北朝鮮情勢次第では日本が持て余すプルトニウムで熱核兵器を製造する懸念が高まる。経験のない核兵器製造が半年以内で済むとは考えにくいし、第一国民が核武装政策に同意するとは考えにくいことから、現実度は低く核兵器拡散リスクの一つに過ぎないのだが、大戦中に日本が原爆製造を考えていた事実もその懸念を高めることとなった。前防衛大臣石破氏の「日本が米国と安全保障条約の元で米国の核の傘に入っているなら、北朝鮮有事の際に米国の核持込みは正当化されるのではないか?」という発言も懸念に火を注ぐことになった。

 

プルトニウム保有量が増え続ける理由

 兵器グレードのプルトニウム保有が増えて問題になっているのは日本だけではない。米国を筆頭に軽水炉を有する国の宿命とも言える。日本がプルトニウムを貯蔵する理由は1950年代に中曽根政権が米国と結んだ原子力協定にある。根幹的な問題は核兵器製造への道となるプルトニウムを高速増殖炉で燃焼させることを念頭におく「核燃料サイクル」が、地球上で最も危険な核物質の再利用のために貯蔵が許された経緯にある。

 

 現実には高速増殖炉計画は1994年に開始されたが、もんじゅの14年間に及ぶ試験運用は失敗に終わり閉鎖を余儀なくされた。これにより高速増殖炉計画は変更を余儀なくされ、高速増殖炉が「高速炉」となりフランスとの共同研究が細々と継続されることになったが、実質的には「核燃料サイクル」の2本の柱の一方が失われることになった。そこで残るもう一本の柱が使用済み核燃料からプルトニウムを取り出してウランと混ぜてMOX燃料を軽水炉原発に使用することになった。

 

プルトニウム再利用にMOX燃料

 唯一のプルトニウム再利用事業を失えば、日本がプルトニウムを保有する理由はどこにもなくなる。そのため1990年代中頃までに7,000トンに及ぶ使用済み核燃料が欧州(英国とフランス)に送られた。しかし再処理過程で生じた核廃棄物は規制されるまで海洋に廃棄され、事故で大気を汚染したことで国外に危険な再処理を委託する日本の責任を問われることとなった。

 

 拠点となった英国の施設は英国政府が買い取り、巨額の国費を投入し、フランスの施設はアレヴァ社の経営を圧迫し倒産寸前に追い込んだ。環境汚染と再処理事業失敗によって日本がリスクのある再処理を欧州に押し付けたことへの批判も高まったが、日本国内の再処理施設は六ヶ所村に建設されたが未だに稼働していない。

 

前途多難なMOX利用

 高浜原発用に持ち込まれたMOX燃料の品質に問題があることがわかると,欧州に送り返された。これに関連して福島原発用のMOXの品質開示をアレヴァ社が拒否したため、福島県はMOX燃料の使用を禁止したが、電力会社は無視して32本のMOX燃料を3号炉に装填した。その6カ月後となる2011年3月に津波でメルトダウンを起こした。皮肉にもこの事故によって(住民の反対を無視して)電力会社がMOX燃料を使っていたことが明らかになった。逆に言えば福島第一事故がなければ日本中の軽水炉原発でMOX燃料が使われていたはずだった。

 

 現在再稼働して運転中の原子炉は5基でその中の3基がMOX燃料を使用しているものの、多くの原子炉停止によってMOX燃料は行き場を失い、プルトニウム貯蓄量の増大につながった。今後、六ヶ所村の再処理施設が稼働すれば欧州に環境汚染のリスクを背負わせることはなくなるが、それでも年間8,000kgのプルトニウム生産は世界が軍事利用や事故リスクの懸念を持つのに十分な量である。

 

プルトニウム保有の説明責任を問われる日本

 全燃料がMOXとなる建設中の大間原発には5トンのプルトニウムが装填されるが、年間のプルトニウム消費量は1,700kgで、再稼働原発が増えればプルトニウム過剰状態が続くので、「平和利用を隠れ蓑として核兵器用のプルトニウムを製造」に走るとする警戒は強まる。

 

 すでにデファクト核武装国とされている日本が国際的な懸念を拭い去るにはどうすべきか、黄金色に見えた原子力平和利用は色あせて過去のものとなった現在、日本はプルトニウム保有の真意を問われ、日米原子力協定を見直す瀬戸際に立たされている。

 

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