巧妙な北朝鮮の海上石油密輸入

2.01.2018

Credit: comment-news 

 

 国連制裁の強化にも関わらず北朝鮮への密輸を取りしまることが事実上不可能で闇ルートは膨大な数にのぼる。石油についても中国の規制強化も公海上での密輸で効果が少ない。

 

 台湾沖で米軍の偵察機が原油を運ぶタンカーから海上で横付けした北朝鮮の小型タンカーへの原油の移動が確認されているが、自衛隊の偵察機も上海沖で同様な密輸現場を発見している。たとえ公海上であってもこうした違法行為は国連決議に違反するものだが、現実には放置されている。その背景には密輸に協力する企業の巧妙な手口がある。

 

 先月、安全保障会議の加盟国によって違法な石炭・石油の取引に使われる船10隻のブラックリストができている。国連外交筋は密輸に使われるタンカーは韓国、香港、台湾、中国籍で、黄海、東シナ海、日本海で海上密輸が行われていることをつかんでいるが、疑いのある輸送船を取り締まることは緊張をさらに高めることになるため、取り締まることはできないという(ニューヨークタイムス誌)。

 

 昨年11月に台湾沖で密輸に使われた輸送船についてトランプ大統領は即座に反応し、船主を特定することが困難であるにも関わらず、中国の責任を批判した。この船は香港国旗を掲げ乗組員25名は中国人であっても、中国人船主の関与は特定は困難である。石油は香港を拠点とする多国籍企業でその本部は広州にあるが、台湾の漁業会社がリースしたものでこの会社は米国の保護下にあるマーシャル諸島に登記されている。

 

 香港当局の調べによるとこの会社の持ち主は北朝鮮の対岸である大連に本部を持つ中国人であった。輸送船が拿捕されると中国政府も部分的な関与を認めたものの中国当局の規制も行き渡っていない現状では、北朝鮮への密輸を根絶することは不可能である。このことが国連決議にも関わらず石炭・石油の流通への影響は極めて少ない理由である。トランプ政権は中国の制裁加担を評価するが実際には密輸を取り締まることはできていないため、制裁で北朝鮮の核兵器開発を中止あるいは遅らせることは不可能なのである。

 

 また公海上での北朝鮮輸送船の検閲は北朝鮮が戦争行為とみなすことから、検閲と実力阻止を自制する場合が多い。2017年以前は年間450万バレルの石油を主にロシアと中国から輸入していた北朝鮮に国連は50万バレル(原油は400万バレル)の制限を課している。北朝鮮が密輸で石油の輸入禁止措置に対抗することは困難なので、やがては制裁効果が現れると考えられるが、密輸に関わる企業の巧妙な手口に阻まれて密輸の根絶はおろか全容を掴むことすら困難な状況にある。