Photo: nymag
2015年8月に、民主党全国委員会(DNC)はヒラリー勝利基金(Hillary Victory Fund)と「ヒラリーをアメリカのために」(Hillary for America:2016大統領選の選挙対策本部)との間で密約を結んだ。民主党全国委員会への資金支援の見返りに、民主党全国委員会の権限を全てクリントン側に引き渡すという内容で、クリントン氏が2016年大統領選に立候補を表明する4カ月前、民主党候補に選ばれる一年前のことである。
ドナ・ブラジルが暴露したDNCの不正
民主党指導部の電子メール流出問題をめぐって、デビー・ワッサーマン・シュルツ前委員長が辞任(2016年7月)した後に、暫定委員長を務めたドナ・ブラジル(注1)が著書、Hacks: The Inside Story of the Break-ins and Breakdowns that Put Donald Trump in the White HouseでDNCの内部状況を暴露したことで明らかとなった。
(注1)大統領選討論会での質問を事前にクリントン側に渡したことで辞任。
DNCの弱みをついたクリントン陣営
2012年にオバマ元大統領の再選活動で、DNCは(1,500万ドルの銀行借入と関係業者への800万ドル支払いを含む)2,400万ドルの負債を抱えていた。破綻危機にあったDNCを救ったのはクリントン陣営である。クリントン陣営は2016年に残っていた負債1,000万ドルを返済、その後、DNCの運営費を負担してきた。その見返りに、DNCはクリントン陣営側に全ての権限を譲渡したことで、DNCの予算と歳出、人材、民主党候補への支援方針、通信や広報活動、戦略などがクリントン陣営の管理下になった。
2016年の7月にウィキリークスは民主党予備選挙でクリントン氏がバーニー・サンダース氏に勝つよう働きかけたDNCメールを告発した。実際に、クリントン陣営の管理下にあったDNCはサンダース氏に不利な選挙戦を仕掛け、必ずクリントン氏が予備選で勝利できるように働きかけた。クリントン陣営はサンダース氏から民主党候補に選ばれる機会を横取りし、民主党候補指名を不正に勝ち取ったのである。
さらにクリントン陣営には政治資金法違反とマーネーロンダリングの疑いがかけられている。本来は民主党候補の指名を受けてから、DNCが集めた政治献金を党から支援として受け取るのが、指名される前からDNCの全面的な支援を受けていたのである。
避けられない民主党内の混乱
元DNC委員長ドナ・ブラジルがこの時期にDNCとクリントン陣営との不正を告発したことについて、バーニー・サンダース氏からの抗議声明がないことが謎であるが、クリントン氏の民主党予備選挙における関与が発覚したことで、民主党内の分裂、党への信頼と人気の低迷は避けられない状況となった。
クリントン財団への不正献金については、別記事に記したので、こちらも参照されたい。
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