3,700年前のバビロンで使われていた世界最古の三角法

27.08.2017

Credi: UNSW/Andrew Kelly

 

ニューサウスウエールズ大学(シドニー)の研究者グループは、3,700年前のバビロンの粘土板に刻まれた数表を解読し、それが世界最古となる三角法の計算表であることを明らかにした。

今回の研究によれば三角法の発見はギリシャではなくそれより1,000年以上前にバビロンであることがわかった。また3,700年前にバビロンでは高度な数学が発達していたことも初めて明らかになった。

 

 任意の三角形は3辺と3角の大きさという6つの要素をもつ。これらは独立でなく3つの要素が与えられれば、他が決定できる場合があるという性質がある。この性質を利用して三角形を特定する学問が三角法(Trigonometry)である。

 

Plimton322の謎

この発見につながったPlimton322と呼ばれる粘土板は1900年代にイラクで考古学者が発見したものである。粘土板には4列15行の数値が当時使われていた60進法で書き込まれている。しかしPlimton322は発見から70年に渡って数学者の頭を悩ます存在であった。

 

Plimton322は長さの比を基準にした特殊な三角法を用いて三角形の形状を精密に記述したものであることが明らかになった。バビロン流の幾何学は3000年前のものだが、現代の測量技術やコンピューターグラフイックスの基盤がその時代に存在していたことになる。

 

三角法の数表では注目する角を挟む2辺の長さの比とその角度から他の辺の長さを割り出す。ギリシャの天文学者ヒッパルコスが紀元前120年頃に作ったとされる数表が最古もものと考えられてきたが、それより1000年以上前にバビロンでは精密な三角法数表が作られていたことになる。バビロンの数表の存在は知られていたが今回の発見でそれが解読されることとなった。

 

Credit: theconversation

 

上図のように直角を挟む異なる長さの2辺をもつ直角三角形で、直角でない一方の角度θを特定するには角度のほか2辺の長さの比(三角関数)を知れば十分である。三角関数の代用としては角度に対応する2辺の比を数表化しても良い。バビロン三角法の精度は高く60進法を10進法に変換すると小数点5桁程度とされる。

 

15行の数値は15のことなる直角三角形の形状を記述したもので、一部が欠けていたが全部で6列38行からなることがわかっている。数表はこれまで計算結果を迅速に確認する補助的手段と考えられてきたが、バビロン独自の60進表記による数表は最新の数学的記述と同じ高度な幾何学に匹敵する。

 

バビロンの数表を用いれば高度な建築設計や測量が可能であるため、バビロンの建築物の幾何学的精緻さが説明できる。18822-1762BCに製作された粘土板は現在ニューヨークのコロンビア大学の古代図書館に収められている。

 

三角法の由来はギリシャとされているがバビロンでは精緻な天文学の観測や建築設計に不可欠であったと考えられている。